「笑わないでよしじまさん つまらない」で検索してこのページにたどり着いたあなた、たぶん今こう思っているはずです。SNSでは「今年一番の読切」「鳥肌が止まらない」と絶賛の声が飛び交っているのに、少し掘るとちらほら「そこまでか?」「思ったより刺さらなかった」という意見も混ざっていて、結局どっちを信じればいいのか分からなくなっている。そんな状態だと思います。
結論から先に言います。この作品は「つまらない」と切り捨てるにはあまりにも惜しい、けれど万人が無条件に感動するタイプの作品でもない。そう感じました。ヒロアカという国民的バトル漫画を描き切った作者が、完結からブランクを経て放った一本の読切ホラー。期待値のハードルが尋常じゃなく高い状態でスタートしているぶん、感じ方に差が出るのはある意味で当然のことなんです。
この記事では「面白い派」と「つまらない派」、それぞれの意見をどちらかに肩入れせずフラットに並べたうえで、筆者自身が読んで感じたことを正直に書いていきます。さらに「こういう人には刺さる」「こういう人には合わないかもしれない」という判断基準も用意したので、最後まで読めば、あなたが読むべきかどうかの答えがきっと見えてくるはずです。
「面白い派」の意見を徹底解剖してみた
今週発売の週刊少年ジャンプ37・38合併号に新作読切センターカラー61p「笑わないでよ しじまさん」が掲載されてます!ぜひ! pic.twitter.com/1gysj9kFsQ
— 堀越耕平 (@horikoshiko) August 12, 2026
まずはネット上で圧倒的に多い「面白い」「傑作」という声から見ていきましょう。感情的な絶賛だけを並べても説得力がないので、なぜそう感じる人が多いのか、構造まで踏み込んで分解していきます。
ジャンルへの裏切りが気持ちいいという声
一番よく見かけるのが「日常系だと思って油断していたら本気のホラーだった」という驚きの声です。表紙やタイトルの雰囲気からは、ほのぼのとした人間ドラマを想像する読者が多いはずです。ところが実際にページをめくっていくと、じわじわと不穏な空気が漂い始め、気づけば背筋が凍るような展開に引きずり込まれている。この「予想を裏切られる快感」こそが、多くの読者を虜にしているポイントだと分析できます。
ホラー作品において最も難しいのは「読者に心の準備をさせないこと」です。最初からホラーだと分かっていると、読者はある程度身構えてしまい、恐怖の効果が薄れてしまいます。しかしこの作品は導入部分の空気づくりが巧みで、油断しきったところに冷や水を浴びせるような構成になっている。だからこそ「ブルルッと鳥肌が立った」というような感想が量産されているわけです。これは偶然の産物ではなく、長年少年漫画の王道バトルを描いてきた作者ならではの緩急コントロール技術が、そのままホラー演出に転用された結果だと考えられます。
作画力の説得力がすごいという声
次に多いのが作画に対する評価です。長期連載でキャラクターの表情や動きを描き込んできた作者だけあって、ページごとの画力の安定感、そしてキャラクターの心理を表情だけで語らせる演出力の高さに驚く読者が非常に多いです。特にセンターカラーで掲載されたカラーカットの完成度は、ジャンプ本誌でも屈指という声も上がっています。
ホラー漫画において絵の説得力は生命線です。どれだけ設定が優れていても、恐怖を表現する画力が伴っていなければ空回りしてしまいます。逆に言えば、絵に説得力があるからこそ、物語の不気味さがダイレクトに読者の感情へ届いているのだと言えるでしょう。この点に関しては、面白い派もつまらない派も、否定的な意見はほとんど見当たりませんでした。作画のクオリティに関しては、ほぼ全員が高評価で一致していると言っても過言ではありません。
読み切りとしての完成度の高さを評価する声
三つ目は、限られたページ数でしっかりと物語を完結させている構成力への評価です。読切漫画は連載と違い、限られたページの中で導入・展開・オチまでを描き切らなければなりません。この作品はセンターカラー含めて長めのページ数が確保されていたこともあり、キャラクターの背景や関係性の描写にもしっかりと余白が使われていて、駆け足感を覚えなかったという感想が目立ちます。
読み切りにありがちな「詰め込みすぎて説明不足になる」「逆に間延びしてしまう」といった失敗を回避し、テンポよく読者を引き込みながら着地まで持っていく構成力の高さは、ベテラン作家ならではの強みが出た部分だと言えます。読み終えたあとに「もっとこの世界観を読んでいたい」と感じる読者が多いのも、この構成の巧みさゆえでしょう。
ヒロアカとのギャップに驚く声
そしてもう一つ見逃せないのが、前作との作風のギャップに対する驚きの声です。少年少女が特殊能力を駆使して戦う王道バトル漫画を描いていた作者が、まったく毛色の違うボーイミーツガールホラーを描いてきたことに対して、意外性を評価する読者が非常に多い印象です。
一つのジャンルで大ヒットを飛ばした作家は、次回作でも似たテイストの作品を求められがちです。しかし今回は真逆とも言えるジャンルに挑戦し、しかもそれが読者の心をしっかりつかんでいる。このチャレンジ精神そのものに拍手を送りたくなる、という声も少なくありません。作家としての引き出しの広さを再認識させられた、という感想も多く見られました。
「間」の使い方が上手いという声
もう一つ、意外と語られていないけれど重要なポイントとして「間」の演出があります。恐怖表現というのは、何かを見せることよりも、あえて見せない時間、静寂のコマをどう配置するかで完成度が大きく変わります。この作品は台詞のない静かなコマの使い方が巧みで、読者が自分の想像力で恐怖を膨らませてしまうような余白の作り方をしていると評価する声が目立ちます。
長期連載のバトル漫画では、テンポよく畳みかけるコマ割りが多用される傾向にあります。ところが今回はその真逆とも言える、あえて間を持たせる静かな演出が随所に見られ、これが読者にじわじわとした不安感を植え付ける結果につながっています。作家としての表現の幅広さを感じさせるポイントとして、多くの読者から支持されている部分です。
「つまらない派」の意見も無視せず正直に検証する
ここからは、あえて厳しめの意見にもしっかり向き合っていきます。絶賛の声ばかりを並べるレビューは信用に値しません。実際に上がっている否定的な意見、あるいはやや辛口な感想についても、根拠まで含めて丁寧に見ていきましょう。
期待値が高すぎたという声
つまらない派、というより正確には「思ったほどではなかった派」の意見で最も多いのが、期待値のハードルが高すぎたという指摘です。長年愛されてきた人気作品を完結させた作者の新作ということで、多くの読者が「今度は一体どんな傑作を見せてくれるのか」と過剰な期待を抱いた状態で読み始めています。
期待値が上がりすぎると、どれだけクオリティの高い作品であっても「思ったほどではなかった」という感想に着地しやすくなるのは自然な心理です。これは作品そのものの出来というより、読者側の期待値コントロールの問題とも言えます。実際、同じ内容の作品でも前情報なしに読んだ場合と、大きな期待を背負って読んだ場合とでは、感じ方が大きく変わってくるものです。この点を踏まえると、つまらないという感想の一部は、作品の完成度そのものへの批判というより、期待とのギャップから生まれた感情である可能性が高いと考えられます。
ホラーとしての怖さが物足りないという声
次に見られるのが、ホラー漫画として見た場合の怖さの物足りなさを指摘する声です。ホラーというジャンルを日常的に読み慣れている読者からすると、恐怖描写のインパクトがやや控えめに感じられる、という意見が一定数存在します。
これは一つのジャンルを主戦場にしてきた作家ではなく、王道バトル漫画を長年描いてきた作家が初めて本格的にホラーへ挑戦した作品だという背景を考えると、ある程度は納得のいく指摘です。純粋なホラー漫画家が積み上げてきた恐怖演出の引き出しの数と比べると、経験の差が出てしまう部分があるのは当然とも言えるでしょう。ただしこれは裏を返せば、ホラー漫画として絶対的な完成度を求める上級者向けの評価基準であり、ライトにホラー要素を楽しみたい層にとっては、むしろちょうど良い塩梅だったという声もあります。
設定や展開に既視感があるという声
三つ目は、物語の設定や展開のパターンに、既視感を覚えたという指摘です。ボーイミーツガールという枠組みや、不穏な人物との出会いから始まる導入は、過去のホラー作品や少年漫画のホラー回でも見られる型に近いという意見が上がっています。
ただしこれについても冷静に考える必要があります。ホラーというジャンルはそもそも王道パターンが確立されているジャンルであり、完全に新しい構造を生み出すこと自体が非常に難しい領域です。既存の型を使いながら、その中でどれだけキャラクターの心理描写や画力、演出のテンポで独自性を出せるかが勝負になります。その意味では、既視感があるという指摘は事実として正しい一方で、それが即座に作品の評価を下げる決定打になるかというと、必ずしもそうとは言い切れません。
短編ゆえの物足りなさを指摘する声
最後に挙げられるのが、読切という尺の短さゆえに、もっと深く描いてほしかったという物足りなさの声です。キャラクターの過去や世界観の設定など、気になる部分が説明しきれずに終わっている印象を受けた読者が一定数存在します。
これは読切作品全般に共通する宿命とも言える部分です。限られたページの中で物語を完結させる以上、すべての要素を丁寧に描き切ることは物理的に不可能です。逆に言えば、続きが気になる、もっとこの世界を知りたいと思わせる力があったからこそ、物足りなさを感じさせているとも言えます。この不足感をネガティブに捉えるか、続編や連載化への期待感としてポジティブに捉えるかで、感想の方向性が大きく変わってくる部分でしょう。
テーマ性の好みが分かれるという声
もう一つ挙げておきたいのが、作品が扱っているテーマそのものへの好みが分かれるという指摘です。ボーイミーツガールという枠組みの中に、人間の孤独感や誰かと分かり合えないもどかしさといった、やや重めの心理描写が織り込まれています。こうしたテーマを重厚に受け止めて共感できる読者がいる一方で、少年漫画らしいカラッとした爽快感を期待していた読者にとっては、やや湿度の高い読後感がミスマッチに感じられることもあるようです。
これは作品の欠陥というより、読者それぞれが漫画に何を求めているかという価値観の違いによって生まれる感想の分岐だと考えられます。爽快なバトル展開を期待して読むと肩透かしに感じる一方、人間ドラマとしての深みを求めて読むと高く評価できる、そんな二面性を持った作品だと言えるでしょう。
結局どっち?タイプ別に合う合わないを診断してみる
ここまで両方の意見を見てきて分かる通り、この作品に対する評価は「作品そのものの質」というより「読者がどんな期待値で、どんな読み方をしたか」によって大きく分かれる傾向にあります。ここからは、実際にどんな人に向いていて、どんな人には合わないかもしれないのか、タイプ別に整理していきます。
面白いと感じやすいタイプ
まず、素直に楽しめる可能性が高いのは次のようなタイプの読者です。
一つ目は、前情報をあまり入れずにフラットな気持ちで読める人です。過剰な期待を背負っていない状態で読むと、演出の巧みさや作画の説得力が純粋に響きやすくなります。
二つ目は、ホラーをガチガチのジャンルとしてではなく、少年漫画的な緊張感の演出として楽しみたい人です。純粋なホラー漫画に慣れきっていない読者ほど、この作品の緩急のつけ方に驚かされる可能性が高いです。
三つ目は、キャラクターの心理描写や表情の演技を重視して読むタイプの人です。台詞よりも表情や間で語る演出を丁寧に拾える読者ほど、この作品の魅力を深く味わえるはずです。
物足りなく感じやすいタイプ
一方で、次のようなタイプの読者は、やや物足りなさを覚える可能性があります。
一つ目は、ホラー漫画を数多く読み込んでいて、恐怖演出そのものの純度やインパクトを重視するタイプの人です。恐怖表現のクオリティに厳しい目を持つ読者ほど、既存のホラー作品と比較して評価が辛口になりやすい傾向があります。
二つ目は、前作の熱狂的なファンで、次回作にも同等以上の衝撃を無条件に期待していた人です。期待値が高すぎる状態からのスタートは、どうしても満足度を下げる要因になりがちです。
三つ目は、短編よりも長期連載でじっくりとキャラクターや世界観が掘り下げられていく物語を好むタイプの人です。この作品はあくまで読切であり、深く広い世界観描写を求めると、物足りなさを感じてしまう可能性があります。
結局のところ、読む価値はあるのか
ここまでの整理を踏まえたうえで、あらためて筆者としての結論を書きます。この作品は、少なくとも「読んで時間の無駄だった」と感じる人はごく少数派だろうと考えています。作画力、演出のテンポ、そしてジャンルを飛び越えるチャレンジ精神という点において、素直に評価されるべき要素が揃っているからです。
一方で、それを「今年最高の傑作」と手放しで絶賛できるかどうかは、読み手の経験値や期待値によって左右される部分が大きい。だからこそ、ネット上で意見が真っ二つに割れているように見えるわけです。実際には真っ二つというより、多くの人が「面白かったけれど、期待していたほどではなかった部分もある」という中間地点の感想を抱いているケースが大半なのではないかと感じます。
迷っているなら、まずは前情報や期待値をいったんリセットして、フラットな気持ちで一度読んでみることを強くおすすめします。絶賛の声も辛口の声も、実際に自分の目で確かめてみて初めて、どちらの感覚が自分に近いのか分かるはずです。少なくとも、読む前から「つまらないんでしょ」と決めつけてスルーしてしまうには、あまりにもったいない一本だと思います。
まとめ
最後に、この記事の重要なポイントを三つにまとめます。
一つ目は、面白い派の評価は「ジャンルの裏切り」「圧倒的な作画力」「読切としての構成の完成度」「前作とのギャップへの驚き」という具体的な根拠に基づいているということです。感情的な絶賛だけでなく、実際に作品の構造を見ても納得できる評価だと言えます。
二つ目は、つまらない派の意見も「期待値の高さゆえのギャップ」「ホラーとしての怖さの物足りなさ」「既視感のある設定」「短編ゆえの説明不足」といった、それぞれに一定の根拠があるということです。ただしそのほとんどは、作品そのものの欠陥というより、読み手の期待値や好みのジャンルとの相性によって生まれているものだと言えます。
三つ目は、結局のところ評価が分かれるのは自然なことであり、実際に読んでみなければ自分がどちら側の感想を抱くかは分からないということです。前情報をなるべく減らしてフラットな状態で読むことが、この作品を一番楽しむコツだと言えるでしょう。
読み終えたあと、きっとあなたはページをめくる手を止められなかった感覚と、しばらく心に残る後味の両方を味わうはずです。この機会に、ぜひ実際のページを開いて、堀越耕平という作家が新たに見せてくれた世界を自分の目で確かめてみてください。読み終えた頃には、次はどんな物語を描いてくれるのか、続きが気になって仕方なくなっているはずです。
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