『悪祓士のキヨシくん』は面白い?読者のリアルな感想と魅力を徹底レビュー

このページにはプロモーションが含まれています

月曜の朝、ジャンプを開いて「今週の当たりはどれだ」と目次を眺める瞬間があります。その視線が、いつの間にか十字架のマークで止まるようになった人は多いはずです。『悪祓士のキヨシくん』。史上最強の悪祓士なのに、悪魔を前にすると足が震えて、人と目を合わせるのも苦手な16歳の少年が主人公という、字面だけ見ると矛盾だらけの作品です。

2024年30号でひっそり始まった新連載は、2026年6月に連載2周年を迎え、単行本は9巻に到達しました。数字だけ見れば「ジャンプで生き残った」というだけの話ですが、この作品が生き残った理由は、実はかなり特殊です。派手な必殺技の名前でも、SNSでバズった一枚絵でもない。読者が繰り返し口にするのは「キヨシくんが震えているところが好き」という、バトル漫画としては相当ねじれた感想なんです。

この記事では、まだ読んでいない人に向けたネタバレ控えめのあらすじから、SNSや掲示板で実際に語られている「面白い」の中身、そして辛口の意見まで、正直に並べていきます。そのうえで、実際に一話から追い続けてきた立場から、この作品の何がそんなに刺さるのかを掘り下げます。読み終わる頃には、たぶんジャンプ+のアプリを開いています。覚悟しておいてください。

『悪祓士のキヨシくん』はどんな漫画か ネタバレ控えめのあらすじと世界観


まずは前提の共有からいきます。ここは未読の人が「読むかどうか」を判断するための材料なので、物語の核心には触れません。1巻から2巻あたりまでで分かる範囲に絞ります。

作者・臼井彰一と、読切から連載に至るまでの助走

作者は臼井彰一さん。この作品はいきなり連載として生まれたわけではなく、2022年16号の週刊少年ジャンプに掲載された読切『エクソシストのキヨシ君』が原型になっています。読切から連載化までおよそ2年。この2年という間隔が、実は作品の完成度に効いています。

ジャンプの新連載には、読切のノリをそのまま引き伸ばして息切れするパターンがあります。一発ネタとしては最高だったのに、週刊のペースで20話も続けると設定の底が抜けてしまう。ところが本作は違いました。読切版の「最強なのにビビり」という一点突破のアイデアに、悪祓士という職業の階級制度、奈落市という舞台、悪魔側の組織構造といった骨組みがきっちり足されている。準備期間に何をやっていたのかが分かる作りです。

2024年6月、ジャンプは「新風疾走!夏のハートビート新連載3連弾」と銘打って3本の新連載を投入しました。そのうちの1本が本作です。同期には『妖怪バスター村上』『ひまてん!』が並んでいて、当時のジャンプ読者からは「今回の3連弾はどれが残るんだ」という品定めの視線が向けられていたわけです。あれから2年、キヨシくんは残りました。

主人公・祓清は「史上最強」で「超ビビり」という矛盾のかたまり

主人公の名前は祓清、16歳。悪祓学校を最年少かつ首席で卒業した、正真正銘の天才です。実力だけを見れば、この年齢で到達できる場所ではありません。周囲は彼を「史上最強の悪祓士」として扱い、初任務の時点で相当な期待をかけています。

ところが本人の中身はというと、極度のビビりで、人見知りもド級。悪魔と対峙すると膝が笑い、初対面の相手とはまともに会話が続かない。強さと精神が完全に切り離されているんです。

普通、少年漫画の「最強主人公」は物語の推進力になります。強いから前に進む、強いから敵を倒す、シンプルな話です。ところがキヨシは、強いのに前に進めない。戦う理由を自分で自分に言い聞かせないと、体が動いてくれない。ここで作品のエンジンが、実力ではなく意志のほうに移るわけです。

この構造が効いてくるのが、彼の過去です。幼い頃、キヨシは両親を悪魔に殺されています。血筋にも家柄にも恵まれていない少年が、それでも悪祓士になろうとした理由がここにある。そして「全てを守れる強さ」を求めて、努力だけで最強にたどり着いた。恐怖心が消えないのは、彼が生まれつきの化け物ではなく、怖がりのまま強くなった人間だからです。

震えながら十字を切る主人公。これがこの漫画の一枚看板です。

舞台は奈落市、そして中華飯店「地獄門」という第二の家

物語の主な舞台は奈落市。悪魔が出没する地域を管轄する悪祓出張所の支部があり、キヨシはここで働くことになります。

面白いのが、その支部が中華料理屋を兼ねているところです。「地獄門」という店を切り盛りしているのが、支部所長の熾木天馬。キヨシにとっては命の恩人であり、彼が奈落支部で働くきっかけを作った人物でもあります。しかもこの人、かつては最高位悪祓士だった大ベテラン。普段は煙草をふかしながら店をまわし、悪魔が出れば即座に現場へ飛ぶという、絵に描いたような「元一線級の親父」です。

戦闘スタイルもいい味を出していて、チンチロリンを振って、出た目によって使う武器が変わるという博打仕様。強さの説明を数値やランクではなく「ノリ」で成立させるあたりに、この作品の余裕を感じます。

そして「地獄門」の存在が、作品全体の温度を決めています。悪魔を祓う仕事は当然ながら死と隣り合わせなのに、帰る場所が中華料理屋。血みどろの任務のあとに炒飯の湯気がある。この落差が、読者にとっての呼吸ポイントになっているんです。

物語のゴールは最高位悪祓士(パラディンクロス)

悪祓士の世界にはきちんとした階級があります。亜級、超級と段階が上がっていき、その頂点に位置するのが最高位悪祓士、通称パラディンクロス。ワンピースでいう海賊王、ナルトでいう火影にあたるポジションです。

キヨシの目標はここ。全てを守れる存在になるための、分かりやすい到達点として設定されています。2巻ではその第一歩として亜級試験に挑むことになり、試験会場でライバルと再会するという、王道中の王道の展開が用意されています。

このゴール設定については、後述する読者の感想の中で少し議論になっている部分でもあります。最強と言われている主人公が「まだ最高位じゃない」という状態をどう扱うのか。ここは作品の面白さと難しさが同居しているポイントなので、後半で改めて触れます。

脇を固めるキャラクターが全員おいしい

キヨシ一人では物語は回りません。この作品、周囲のキャラクターの立たせ方がとにかく上手いんです。主要どころを軽く紹介しておきます。

棺葬介、18歳。悪祓士の名門・棺家の御曹司で、眼鏡がトレードマーク。「キヨシがいなければ首席だった」と言われる期待のルーキーで、当然のようにキヨシをライバル視しています。ただこの男、ただの噛ませ役ではありません。回復用の聖水を渡してくるなど面倒見のいい一面があり、読者人気が非常に高い。ピクシブ百科事典には棺くん専用の感想まとめを書いている人がいるレベルです。

浄ヶ崎悪狩、20歳の女子大生。「地獄門」で働く悪祓士で、名門の家に生まれながら悪祓学校をドベで卒業したという落ちこぼれコンプレックスの持ち主です。特筆すべきは能力で、悪魔の出現場所をアホ毛が指し示すという悪魔予知を使います。真剣なシーンでもアホ毛が動く。この一点だけで作品の空気が分かります。

三途川涅槃、キヨシのクラスメイト。母子家庭で母親が入院中のため、新聞配達などのバイトで家計を支えているという苦労人です。そして彼には、幼い頃からジャック=ジョーという「見えない友達」がいます。

ジャック=ジョー。ネハンの見えない友達として長年そばにいた存在ですが、その正体は悪魔。しかも「13人の怒れる魔王(サーティーンクラブ)」の1人という大物です。ただし本人には記憶がないらしい。この設定が物語の中盤以降を大きく揺らしていきます。

聖剣。光の騎士団に所属する最高位悪祓士で、厳格かつ容赦のない性格。ジャック=ジョーを祓おうとする立場にあり、キヨシたちとの間に緊張をもたらします。

この面子を見て気づくことがあります。全員が何かしら欠けているか、抱えているんです。ビビりの最強、落ちこぼれの名門、家計を背負う高校生、記憶をなくした魔王。強さの序列よりも、それぞれの事情のほうが目立つ設計になっている。

「大虐殺」と魔王たち、物語の縦軸

世界観の背骨として置かれているのが、大昔に起きた悪魔による大虐殺。百鬼夜行とも呼ばれるこの出来事では、死者およそ20万人、当時の悪祓士24名が全員死亡したと語られています。

この数字がじわじわ効いてきます。悪祓士24名が全滅した。つまり悪祓士という職業は、常に全滅の可能性を抱えた仕事だということです。日常パートで炒飯を作っている連中が、いつでもその24名になり得る。ギャグの隣に置かれた歴史としては、なかなか重い。

そして「13人の怒れる魔王」という上位存在の枠組みがあり、物語が進むにつれて彼らが順番に牙を剥いてきます。9巻の時点では魔界へ舞台が移り、大魔王の息子まで登場する規模になっています。1巻の「中華料理屋で働き始めた新人くん」から、よくぞここまで広がったものです。

ネット上のリアルな感想まとめ 読者は本当のところ何を面白がっているのか

ここからが本題です。作品紹介はどこのサイトでも読めます。知りたいのは「実際に読んだ人がどう感じたか」のはずなので、SNSや個人ブログ、レビューサイトで見られる声の傾向を、正直に整理していきます。持ち上げるだけでは意味がないので、辛口の意見も同じ分量で扱います。

圧倒的に多いのが「キヨシの人間味に泣かされた」という声

感想の中で最も繰り返し登場するテーマが、キヨシの弱さです。

強い主人公が強い敵を倒す話なら、読者は爽快感で反応します。ところが本作の感想は、爽快感より共感の色が濃い。悪魔の前で足がすくむキヨシ、任務前に呼吸を整えるキヨシ、誰かに話しかけられて言葉に詰まるキヨシ。そういう「戦闘力とは関係ない場面」を挙げて好きだと語る人が非常に多いんです。

特に印象的なのが、深呼吸の描写に反応している読者の存在です。ある個人ブログでは、連載1周年の巻頭カラー回でキヨシが深呼吸をしていたことに触れ、それが第1話とつながっていて嬉しかったと書かれていました。1年前に読んだ仕草を、1年後の読者が覚えていて、つながりに気づいて喜ぶ。これは作者が長期的にキャラクターの芯を管理できている証拠です。

読者は必殺技の名前を覚えることには慣れています。でも「呼吸の仕方」を覚えている読者は、そう多くない。

「ギャグとシリアスの温度差が絶妙」という評価

次に多いのが、作品全体のバランスに対する評価です。

本作は公式に「超痛快ドラマチック悪祓バトルコメディー」と銘打たれています。コメディーと明言している通り、笑いの成分がかなり多い。アホ毛で悪魔の場所を予知する。チンチロで武器が変わる。塩対応が話題になって満員の中華料理屋。どれも真面目な顔で描かれるからこそ笑えます。

ところが、シリアスに入った瞬間の切り替えが容赦ない。両親を殺された過去、全滅した先人たち、守れなかったものへの後悔。ふざけていた同じページの数コマ後に、読者の腹を殴りに来ます。

この落差について「情緒がおかしくなる」「笑ってたのに急に泣かされた」という感想が定期的に流れます。感情のジェットコースターを毎週19ページで回されているわけで、読者としてはたまったものではありません。もちろん褒めています。

棺葬介の人気が想像以上に高い

ライバルキャラの人気は少年漫画の健康診断みたいなものですが、この作品はかなり健康です。

棺葬介について語る熱量が、とにかく高い。ピクシブ百科事典には「推しの棺葬介くんの活躍回だけを追った感想まとめ」を投稿している読者がいて、リアルタイムで読みながら書いた考察を、間違っていた部分も含めてそのまま残しているという徹底ぶりです。ウン年ぶりに沼にはまったと自分で書いている。ここまで人を動かすライバルキャラは、そう頻繁には生まれません。

人気の理由は分かりやすくて、彼が「正しく努力してきた人間」だからです。名門の御曹司で、実力もある。キヨシがいなければ首席だった。つまり、たった一人の天才のせいで二番手に固定された男です。しかもその相手を憎みきれず、聖水を渡すような優しさまで持っている。

魔王に追い詰められ、キヨシに助けられ、それでも「いつかお前を超えて最高位悪祓士になる」と宣言する。この宣言に心を掴まれた読者が大量にいます。分かります。

「戦闘の説明が少ないのが逆にいい」という玄人筋の感想

これは少しマニアックな声ですが、非常に鋭い指摘なので紹介します。

作中には戒力という力が登場します。悪祓士が使う力の根幹にあたるものですが、これについて詳細なルール説明がほとんどありません。ある読者は、1年ほど普通に面白く読んできて、修行編に入ったところで「そういえば最初から強いから受け入れてたけど、詳しい説明なくないか」と気づいた、と書いています。そして、これは作者がわざと説明していないのではないか、と推測しているんです。

バトル漫画には、能力の仕組みを緻密に説明して読者に推理させるタイプと、理屈を省いて画の勢いで押し切るタイプがあります。本作は明確に後者寄り。「避けなければ死ぬ」「傷をつけたのはお前で何人目だ」といった、強さの格を示すセリフは入れるけれど、原理の解説は最低限で止める。

この設計、実は主人公の性質と噛み合っています。キヨシの強さは読者にとっても本人にとっても、ある種のブラックボックスなんです。理屈で説明できる強さではなく、努力の果てに手に入ってしまった規格外。だから説明されないほうが、彼の異物感が保たれる。

厳しい意見もある 最強設定と階級システムへの疑問

褒めるだけの記事は信用できないので、辛口の声も正面から扱います。

まず設定面。ジャンプ考察系のブログでは、最高位悪祓士というゴールの扱いに疑問が呈されています。要旨としては、亜級悪祓士が超級と同等の力を持つのなら、権限以外に何が違うのか分かりにくい、というもの。そして、最終目標であるはずの最高位のハードルが下がって見えると、物語のクライマックスを盛り上げるときに足を引っ張るのではないか、という指摘です。

加えて「キヨシの最強設定そのものが扱いにくい」という声。最初から最強の主人公は、成長曲線を描きにくいという古典的な難題を抱えます。この作品はそこを「精神の成長」で解こうとしていますが、バトル漫画としての緊張感をどう維持するかは、確かに継続的な課題です。

もうひとつ、絵柄について。電子書籍ストアのレビューには、絵は好みではないけれど話が面白い、という趣旨の感想があります。この作品の作画は線が独特で、いわゆる万人受けの整った絵とは少し方向性が違う。第一印象で弾かれる人が一定数いるのは事実です。

ただ、この点については筆者としてかなり言いたいことがあるので、次の章でみっちり反論します。

レビューサイトの評価と、無料公開のたびに増える新規読者

数字の話もしておきます。電子書籍ストアのめちゃコミックでは、本作の評価が5点満点中4.7という高水準。付いているタグも「キャラが魅力的」「クセになる」「不器用」と、読者が何を評価しているのかがそのまま出ています。

集英社側も定期的に無料公開を仕掛けていて、2025年6月の連載1周年では11話まで、2026年6月の2周年では22話までを期間限定で無料開放しました。最新刊発売のタイミングでも12話一挙無料をやっています。この手のキャンペーンが繰り返し打たれるのは、編集部が「読ませれば刺さる」と判断している作品の典型パターンです。

実際、無料公開のたびにSNSでは新規読者の悲鳴が並びます。無料分を読み切って、続きが気になって単行本に手を出す流れが定番になっている。まんまと乗せられている自覚はありますが、乗せられて正解の作品です。

連載2周年と、巻頭カラーで盛り上がった瞬間

先ほど紹介した個人ブログの筆者は、ジャンプを定期購読しているものの月曜に読むことは滅多にないと書いていました。それが、表紙にキヨシくんが大きく載っていたのを見て、つい読んでしまった。理由は連載1周年の巻頭カラーでした。

そして「1話を読んだ時からこれは続くと思ったけれど、本当に続いてくれて嬉しい」「面白いと思ったものでも普通に打ち切りになることがある」と続けています。

この感覚、ジャンプ読者なら全員が持っている恐怖心です。好きになった新連載が消える経験を何度もしているから、生き残ったこと自体を祝う文化がある。2周年を迎えた本作に対する読者の喜び方には、単なる人気作への声援とは違う、生存を見届けた側の安堵が混ざっています。

筆者の独自レビュー この作品の何がそんなに刺さるのかを分解する

ここからは、実際に追い続けてきた立場から、なぜこの作品がこれほど読者の心を掴んだのかを技術的に分解していきます。感想ではなく、構造の話です。

作画 整った絵ではなく、怖さが機能する絵

まず絵柄の話から。先ほど「絵は好みじゃない」という声を紹介しましたが、筆者の評価は真逆です。この作品の作画は、この物語のために最適化されています。

ポイントは黒の使い方です。悪魔が登場するコマの黒の量、そして影の落とし方が非常に重い。ジャンプのバトル漫画は、読みやすさを優先して画面を明るく保つ傾向がありますが、本作は必要な場面で遠慮なく画面を潰してきます。結果として、悪魔がちゃんと怖い。

これは主人公の性質と直結しています。キヨシはビビりです。でも読者が「そんなに怖がるほどか」と感じてしまったら、この設定は成立しません。主人公の恐怖心を読者に共有させるには、敵が本当に怖く見えなければいけない。整った美しい絵ではなく、不快で不気味な絵が必要なんです。

そのうえで、日常パートの絵はきちんと緩む。中華料理屋のシーンでの線の軽さと、悪魔と対峙するシーンでの線の粘りが、明確に描き分けられている。この振れ幅こそが、この作者の武器です。

第一印象で弾かれた人には、せめて悪魔が本格的に暴れる回まで読んでほしいと思っています。あの黒を見てから判断してほしい。

ギャグとシリアスの落差は、事故ではなく設計

「情緒がおかしくなる」と言われる急転直下ですが、これは偶然生まれているものではありません。かなり計算された配置です。

観察すると、この作品のギャグは基本的に「日常側の人間」が担当しています。アホ毛で予知する悪狩、チンチロを振る熾木、塩対応の店。つまり、キヨシが守ろうとしている側の世界が笑いを供給している。

一方でシリアスは、悪魔と、キヨシ自身の過去が担当します。守る側が笑い、脅かす側が黙る。この役割分担が徹底されているから、ギャグが多くても緊張感が死なないんです。むしろ日常が楽しければ楽しいほど、それが脅かされたときの喪失感が増す。

コメディーを名乗るバトル漫画には、笑いが緊張を殺してしまう失敗パターンがよくあります。本作がそこを回避できているのは、笑いの発生源を守るべきものの側に固定しているからです。ギャグが多いほどバトルが重くなるという、地味に高度な仕掛けが動いています。

「深呼吸」というモチーフの反復が上手すぎる

先ほど読者の感想として紹介した深呼吸の話を、もう少し掘ります。

キヨシは戦う前に呼吸を整えます。これは必殺技の予備動作ではなく、単に怖いからです。震える体をなんとか動かすための、ごく個人的な儀式。

このモチーフが1話に置かれていて、1年後の巻頭カラー回にも出てくる。しかも作中では大げさに説明されません。ただ描かれるだけ。気づいた読者だけが「あ」となる仕掛けです。

長期連載でキャラクターを維持するとき、多くの作品は口癖や決めゼリフを使います。分かりやすくて強い手法ですが、繰り返すと様式美になって感情が薄れる。ところが呼吸は違います。呼吸は毎回、状況によって意味が変わる。同じ深呼吸でも、初任務のそれと、仲間を守るための今回のそれでは、まったく重さが違います。

キャラクターの成長を、セリフではなく仕草の意味の変化で見せる。これができる作家は、そんなに多くありません。

悪魔side の描き方に厚みがある

この作品、敵の作り込みも丁寧です。

象徴的なのがジャック=ジョーです。彼はネハンの見えない友達として長年そばにいた存在で、少年時代の孤独を埋めてきた相手。ところが正体は13人の怒れる魔王の一人であり、本人にはその記憶がない。

この設定が突きつけるのは、単純な善悪では割り切れない問いです。悪祓士は悪魔を祓う仕事。でもその悪魔が、誰かにとってのかけがえのない友達だったら。厳格な最高位悪祓士である聖剣がジャック=ジョーを祓おうとする展開は、正義と正義がぶつかる構図そのものです。

さらに物語が進むと、悪魔側の内部事情や序列が描かれ、9巻では魔界そのものへ舞台が移ります。大魔王の息子まで出てきて、公開処刑だの宝物の奪還だのと、向こう側の政治が動き出す。敵を「倒すべき障害物」で終わらせず、社会として描いている。この厚みが、物語の寿命を伸ばしています。

週刊連載としての引きの作り方が抜群にうまい

これは本誌で追っている人ほど実感しているはずですが、毎週のラストページの作り方が本当に憎い。

新事実の提示、新キャラの登場、絶体絶命の演出、この3種類をローテーションしながら、絶妙に情報を出し惜しみしてきます。しかも引きのために話を引き延ばすタイプではなく、ちゃんと展開を進めたうえで引く。1話あたりの情報密度が高いんです。

単行本でまとめて読むと、テンポの良さに驚きます。5話くらい進んだと思ったら舞台が変わっている。ジャンプの週刊ペースで、これだけ話を動かせるのは体力があります。

今から読むならどこから? 無料と最新刊の話

さて、ここまで読んで気になってきた人のために、実用情報を置いておきます。

まず入口としては、ジャンプ+やゼブラックでの期間限定無料公開が定期的に実施されています。1周年で11話、2周年では22話までが開放されました。この手のキャンペーンは記念日や新刊発売のタイミングで繰り返されるので、公式サイトや公式X(旧Twitter)をチェックしておくと、無料でまとまった話数を読めるチャンスに当たります。

単行本は2026年5月1日に8巻、そして2026年8月4日に9巻が発売されました。9巻の表紙は地獄瀬3兄弟で、本誌でも盛り上がった魔界でのバトルが本格的に始まる巻です。ちょうど物語がスケールアップする節目なので、今から追い始めるにはいいタイミングと言えます。

なお、アニメ化については2026年8月時点で公式発表は出ていません。ただ、連載2周年を超えて単行本が9巻まで積み上がり、限定グッズのプレゼント企画が展開されるような状況ですから、期待している読者はかなり多いはずです。もしアニメが決まったとき、あの黒々とした悪魔の作画がどう動くのかは、想像するだけで楽しくなります。先に原作を読んでおいて、放送日にドヤ顔をする準備をしておくのが賢いやり方です。

こんな人には確実に刺さる

最後に、ターゲットを明確にしておきます。以下に当てはまる人は、たぶんハマります。

強い主人公の無双を見たいのではなく、怖がりながら踏み出す人間を見たい人。バトル漫画の熱さと、日常コメディの緩さを同じ作品で味わいたい人。ライバルキャラに感情移入して夜中に語りたくなるタイプの人。設定の説明が多すぎる作品に少し疲れていて、勢いと画で読ませてくれる漫画を探している人。そして、自分も本当は怖がりだと自覚している人。

逆に、緻密な能力バトルの理屈をパズルのように解析したい人には、少し物足りなく感じる可能性があります。この作品は理屈より感情で動く漫画なので、そこは好みが分かれるところです。

ただ、ひとつだけ言わせてください。震えながら十字を切る少年の姿は、能力バトルの理屈では絶対に作れない種類の感動を持っています。強いから戦えるのではなく、怖いのに戦う。この差は、読めば分かります。

まとめ

『悪祓士のキヨシくん』を追いかけてきた立場から、押さえておきたい要点を3つに絞ります。

1つめ。この作品の核は「史上最強なのに超ビビり」という矛盾にあります。両親を悪魔に殺された少年が、恐怖心を抱えたまま努力だけで最強に到達した。だから彼の強さは爽快感ではなく共感を生みます。読者が繰り返し挙げる好きなシーンが、必殺技ではなく深呼吸だという事実が、この作品の本質をそのまま示しています。

2つめ。ギャグとシリアスの落差は事故ではなく設計です。笑いを生む役目は中華飯店「地獄門」の面々、つまりキヨシが守ろうとしている側が担っていて、脅かす側は徹底して黙って怖い。日常が楽しいほどバトルの重さが増す構造になっているため、コメディー要素が多くても緊張感がまったく死にません。加えて、悪魔側を単なる障害物ではなく社会として描いているので、物語のスケールが巻を追うごとに広がっていきます。

3つめ。読み始めるなら今がいいタイミングです。2026年8月4日に9巻が発売され、舞台は魔界へ。連載2周年を機に無料公開キャンペーンも繰り返し実施されているので、お金をかけずにまとまった話数を確認できます。絵柄で弾かれたという声もありますが、悪魔が本気で暴れる回の黒の使い方を見てから判断してほしい。あの重さは、この物語のために選ばれた線です。

月曜のジャンプで、あるいはアプリの無料公開で、震えている少年に一度会ってみてください。彼が息を吸って、吐いて、それでも前に出る瞬間を見たら、次の週も同じ場所を開くことになります。そして気がつけば、9巻をレジに持っていく自分がいるはずです。深呼吸してから、どうぞ。

▼合わせて読みたい記事▼

アニメ化した作品はAmazon Prime Videoが良い理由!
漫画やアニメを楽しむためにお得な方法をお伝えします!アニメ化した作品を楽しむならAmazonプライムがおすすめな理由を紹介したいと思います。それでは詳しく見ていきましょう!ネットをよく利用する方の中には「Amazonプライム会員はお得!」と...
悪祓士のキヨシくん!ヒロイン黒鐘凶華が可愛すぎる!魅力と活躍まとめ
『悪祓士のキヨシくん』を読み進めていくと、必ず一度は立ち止まる瞬間があります。右目に眼帯、腰まで届く黒髪、全身から漂う「近寄ったら斬られそう」な圧。鉄血の騎士団団長・黒鐘凶華の初登場シーンです。ところが、この人の口から出てくる言葉は「白馬の...