「あの氷、実際に行けるらしいよ」
友達からこの一言を聞いて、今スマホでこのページを開いた人もいるんじゃないだろうか。『メダリスト』を読んでいて、いのりと司が涙も汗もこぼしたリンクや、二人が並んで歩いた商店街が、なんだか妙にリアルだと感じたことはないだろうか。それもそのはず。この漫画に出てくる場所は、ほとんどが実在する。しかも舞台は名古屋。京都や東京みたいな定番の聖地巡礼スポットとは違って、地元の人が普通に暮らしている街のあちこちに、いのりと司の物語がそのまま置いてある、という感覚に近い。
この記事では、月刊アフタヌーンで連載中の『メダリスト』に登場する名古屋の聖地を、大須スケートリンクを中心にまとめてみた。通学中や通勤中のスキマ時間でサクッと読めるように、行き方や見どころもぎゅっと詰め込んである。読み終わる頃には、休みの日に「ちょっと大須まで」なんて言い出したくなっているはずだ。
正直に言うと、こういう聖地巡礼系の記事を書くたびに毎回思うことがある。作品の熱量と土地の実在感が噛み合っている作品は、そう多くない。だけど『メダリスト』は別格だ。架空のリンクや架空の街で戦わせることもできたはずなのに、あえて実在の名古屋を選んで、そこに登場人物たちの人生をそのまま重ねてしまった。だからこそ、聖地に立ったときの感動が桁違いになる。この記事を読み終えたら、Googleマップで大須のあたりをぐるぐる拡大縮小したくなること間違いなしなので、覚悟しておいてほしい。
名古屋がまるごと聖地!『メダリスト』のモデル地をひとまず整理
✧₊🥇 劇場版『#メダリスト』
2027年2月19日公開決定🎬🥇₊✧ティザービジュアル&特報公開🎞️https://t.co/WIvCQuBgKj
全日本ノービス大会、開幕。
戦いの舞台はスクリーンへ──!#medalist pic.twitter.com/DtF51wuf7J— 劇場版『メダリスト』公式⛸🏅2027年2月19日全国ロードショー (@medalist_PR) August 30, 2026
まず前提として、『メダリスト』という作品がどれだけ名古屋に本気なのか、そこから話しておきたい。作者のつるまいかだ先生は愛知県出身で、自分の地元をほぼそのまま作品の舞台にしている。リンクだけじゃなく、寺、商店街、公園、喫茶店まで実在するモデルがあるというのは、正直かなり珍しい。普通のスポーツ漫画なら架空の街や学校を作って世界観を守るところを、あえて実在の地名や施設をそのまま使っている。しかもそれが取ってつけた設定じゃなくて、物語の熱量とちゃんと結びついているから読んでいて気持ちがいい。
物語の中心にいるのは、夢に破れたアイスダンス選手・明浦路司と、家庭の事情でスケートを始めるのが遅れた小学生・結束いのり。もうスケーターとしての将来を諦めかけていた司が、いのりという原石に出会ったことで、コーチとしてもう一度戦う意味を見つけていく。この二人の関係が、実在する名古屋のリンクという具体的な場所を通して積み上げられていくからこそ、読んでいるこちらまで「本当にどこかで起きていること」のように錯覚してしまう。フィクションと現実の境界線が、聖地という形でちゃんと繋がっているのが、この作品の一番の強みだと個人的には思っている。
作品が始まったのは2020年7月号の月刊アフタヌーン(講談社)で、そこからずっと愛知目線のリアルさで評価を積み上げてきた。2025年1月からテレビアニメ第1期が放送され、2026年1月からは第2期がスタート。フィギュアスケートを題材にした漫画としては異例の熱量で語られていて、SNSでも毎話のように感想が飛び交っている。ちなみに2026年9月現在、制作上の都合により一時休載中というタイミングでもある。だからこそ、続きが気になって仕方ない今のうちに、聖地を巡って世界観にどっぷり浸っておくのも悪くない過ごし方だと思う。
しかも今、『メダリスト』界隈は静かに沸騰している。2027年2月19日には劇場版『メダリスト』の公開が決定していて、テレビシリーズ第2期の続きにあたる全日本ノービス大会が舞台になるという特報がすでに公開済みだ。いのりと司が、天才少女と呼ばれる狼嵜光と、その専属コーチである元金メダリストの夜鷹純を相手に、氷上の頂点をかけて直接対決を挑む展開が予告されている。休載中の今だからこそ、劇場版に向けて盛り上がっていく空気を感じながら聖地を歩くのは、なかなか贅沢な過ごし方じゃないだろうか。
名古屋を舞台に選んだ理由、作者の熱すぎるエピソード
つるまいかだ先生が漫画家を志したきっかけが、いのり役を演じる声優・春瀬なつみさんへのファン心理だった、という話は知っているだろうか。「いつか自分の作品で春瀬さんに主演してもらいたい」という一つの夢を実現するために漫画家になり、実際にアニメ化までこぎつけて、その夢を叶えてしまった。この経緯は一部で「リアルバクマン」と呼ばれていて、作品の外側にあるエピソードだけでも十分に胸が熱くなる。
さらに取材のためにスケート教室に通い、練習中に骨折を負うほど本気で取り組んだというのも有名な話。だからこそ作中のリンクの空気感や、選手たちの息づかいがやけにリアルに感じられるわけで、これは絵の上手さだけでは出せない説得力だと思っている。実在の場所をそのまま舞台にしているのも、こうした徹底した取材姿勢の延長線上にあるんだろう。
そしてこの熱量は、賞レースの結果にもしっかり表れている。「次にくるマンガ大賞2022」ではコミックス部門で第1位を獲得し、その後「第68回小学館漫画賞」の一般向け部門、さらに「第48回講談社漫画賞」総合部門まで受賞するという、出版社の垣根を越えた快挙を成し遂げた。おまけに主人公・結束いのりというキャラクター自体も「マガデミー賞2022」で主演女優賞を獲得していて、作品だけでなくキャラクターそのものの魅力まで正面から評価されている。ここまで来ると、実在の名古屋を舞台にした説得力と、賞レースでの実績が両輪になって作品の評価を押し上げているんだと感じる。
舞台は大須エリアと港区エリアの二本柱
『メダリスト』の主な舞台は、名古屋市中区の大須エリア。いのりと司が拠点にしているリンクも、二人がよく歩く商店街も、ほとんどがこのエリアに集中している。そこにもう一つ、いのりのライバルである狼嵜光が拠点にしている港区エリアが加わる形だ。地下鉄の鶴舞線、名城線、名港線を使い分ければ、この二つのエリアは無理なく1日で回りきれる距離感になっている。遠征というほどの気合いはいらないし、名古屋観光のついでに寄れる範囲というのも聖地巡礼のハードルを下げてくれるポイントだ。
全国大会や海外遠征の舞台も、地図で見ると意外とリアル
面白いのは、いのりと司の活動範囲が名古屋だけにとどまっていない点だ。全日本ノービス大会の舞台としては青森が登場し、京都の蓮華茶FSCに所属する大和絵馬とのやりとりでは京都が絡んでくる。さらに海外挑戦のパートでは、バンコクで行われたジュニアグランプリの初戦や、北京で開幕したジュニアグランプリファイナルまで描かれていて、いのりたちの世界がどんどん広がっていく様子が地理的にもちゃんと裏付けられている。
こういう細部まで実在の地名を丁寧に使い分けているところに、作者の本気度がにじみ出ていると個人的には思っている。名古屋という地元愛だけで終わらせず、全国大会や国際大会の舞台になる都市までリアルに描き分けているからこそ、いのりたちが本当に世界を目指している実感が読んでいて伝わってくる。今回の聖地巡礼のメインは名古屋だけれど、いつか青森や京都、あるいは北京の聖地巡礼記事も書いてみたいと密かに思っている。
『メダリスト』の心臓部、大須スケートリンクの正体に迫る
作中でいのりと司が所属するルクス東山FSCのホームリンクとして描かれているのが、実在の「名古屋スポーツセンター」。地元では長年「大須スケートリンク」の愛称で親しまれてきた施設で、聖地巡礼の記事でも真っ先に名前が挙がる場所だ。ここを外して『メダリスト』の聖地巡礼は語れない、と言い切ってしまってもいいくらい、物語の中心に位置している。
いのりと司、運命の出会いが生まれた場所
第1話、いのりと司が初めて言葉を交わすシーンの舞台がこのリンクだった。夢に破れた青年コーチと、周りから見放されていた少女。この二人が氷の上で出会うところから、すべてが動き出す。作中ではリンクの滑走面だけでなく、ロッカールームや受付カウンター、自販機コーナーといった細部まで丁寧に再現されていて、実際に足を運んでみると「あ、このアングル見たことある」と鳥肌が立つ瞬間が何度もある。エンディングの取材協力クレジットにも名前が記載されているくらいだから、制作側の本気度も相当なものだと分かる。
このリンクがすごいのは、単なる背景として使われているんじゃなくて、いのりと司の成長そのものと結びついている点だ。何もなかった二人が、この場所で少しずつ積み上げていく時間が丁寧に描かれているからこそ、実際にリンクの前に立ったときの感動が変わってくる。滑走する選手たちのエッジの音、リンクの少しひんやりした空気、観客席から聞こえる保護者の声。漫画の中で何度も描かれてきたそうした空気感を、現地では実際に体で感じ取れる。写真を撮るだけで満足するにはもったいない場所だ。
正面玄関に立って館内を見上げると、いのりが初めてこのリンクを訪れたときの緊張感が、なんとなく追体験できる気がする。何者でもなかった一人の少女が、この扉をくぐったことで人生が動き出した。そう考えると、ただの公共施設だったはずの建物が、途端に特別な意味を持ち始める。
伊藤みどり、浅田真央も滑った名門リンクという事実
大須スケートリンクは、70年近い歴史を持つ屋内型のリンクで、1年中滑れる貴重な施設として名古屋のスケート文化を支えてきた。ここで練習していた選手の顔ぶれがまた豪華で、伊藤みどり選手、浅田真央選手、村上佳菜子選手、宇野昌磨選手といった、日本のフィギュアスケート史に名を残す選手たちがこのリンクで汗を流してきた。
つまり『メダリスト』の中でいのりが世界を目指す舞台として、このリンク以上にふさわしい場所はほとんどない、ということになる。フィクションの中だけの憧れじゃなくて、実際にオリンピックメダリストを輩出してきたリンクをモデルにしているという事実が、物語の説得力を何倍にも押し上げている。作者が取材でこの場所を選んだ理由も、なんとなく腑に落ちる気がする。
名古屋民ほどニヤリとする、FSC名と地下鉄路線の小ネタ
ここでひとつ、地元の人ほど反応してしまう小ネタを紹介したい。作中に登場するいのりたちの所属クラブ「ルクス東山FSC」や、ライバルたちの所属クラブ「名港ウィンドFSC」「グラビティ桜通」「名城クラウン」といったチーム名、これがどれも名古屋市営地下鉄の路線名や駅名から取られている。東山線、名港線、桜通線、名城線という具合に、地下鉄でよく見る名前がそのままクラブ名になっているというわけだ。
これに気づいた瞬間、思わず「やられた」と声が出た。ただのネーミングセンスというより、名古屋という街そのものをクラブの個性に落とし込んでいるようなこだわりで、地元民なら思わずニヤリとしてしまう仕掛けになっている。聖地巡礼で地下鉄に乗るときは、路線図をちらっと見ながら「あ、これがあのクラブの名前の元ネタか」と確認してみるのも、この作品ならではの楽しみ方だと思う。
こういう小ネタは、原作を読み込んでいる人ほど嬉しくなるタイプの仕掛けだと思う。派手などんでん返しじゃなくて、地図を眺めているだけで気づける程度のさりげなさ。だからこそ、実際に名古屋の地下鉄に乗って移動しているときにふと気づくと、一人で「にやり」としてしまう瞬間が生まれる。聖地巡礼というのは、こういう小さな発見の積み重ねが一番の醍醐味なんだと、この作品を巡っていて改めて実感した。
アクセスと料金、行く前にここだけチェック
聖地巡礼の前に、基本情報だけ押さえておきたい。住所は愛知県名古屋市中区門前町1-60。地下鉄鶴舞線「大須観音駅」の2番出口から徒歩約5分というアクセスの良さも魅力の一つだ。バスを使う場合は、栄23号系統・名駅18系統なら「西大須」バス停から徒歩約2分、中巡回系統なら「大須観音」バス停から徒歩約2分で到着する。
営業時間は平日が12:00〜18:00、土日祝・春休み・冬休みの期間は10:00〜18:00。休館日は1月1日のみというのも嬉しいポイントだ。一般滑走の料金は大人2,000円、学生(中学生以上)1,800円、子ども(小学生以下)1,400円となっている。せっかく現地まで行くなら、外から眺めるだけじゃなくて実際に氷の上に立ってみるのもおすすめしたい。いのりと司が積み重ねてきた練習の重さが、リンクに立った瞬間にちょっとだけ体感できる気がするからだ。
訪れるタイミングにも少しだけコツがある。平日は開館時間が12時からと遅めなので、午前中に大須観音や商店街を回ってから午後にリンク入りするルートが組みやすい。逆に土日祝や長期休み期間は10時開館になるので、朝からフル回転で聖地を巡りたい人にはこちらのほうが動きやすい。滑走に自信がない人でも、貸し靴のサービスがあるスケートリンクは多いので、手ぶらで行っても意外と何とかなるものだ。せっかくの機会だから、見るだけで終わらせずに一歩踏み込んでみてほしい。
大須観音からコメダ珈琲店まで、聖地巡礼で外せない名古屋スポット
大須スケートリンクの周辺にも、見逃せないスポットがぎゅっと詰まっている。徒歩圏内だけでここまで巡れるのかと驚くくらい密度が高いので、リンクとセットで回るルートを組んでおくと効率がいい。
大須観音、いのりの日常と出会いが交差する場所
正式名称は北野山真福寺寶生院、地元では大須観音の名で親しまれている歴史ある寺院で、学問の神様としても知られている。名古屋スポーツセンターからは徒歩4分ほどとかなり近い立地だ。作中ではいのりがミミズを採っていたり、京都の蓮華茶FSCに所属する大和絵馬と初めて出会うシーンの舞台として登場する。ライバルであり同時に刺激を与え合う存在との出会いが、観光名所でもあるこの場所で描かれているのは、実在の街をそのまま舞台にしているからこそ生まれる面白さだと思う。
近くには「大正琴発祥之地」の碑もあり、司が腰かけていたベンチのモデルではないかとファンの間で話題になっている場所でもある。大須観音そのものの雰囲気も含めて、写真に収めておきたいスポットだ。
観音様の朱塗りの本堂と、すぐ隣に広がる下町の商店街というギャップも、大須というエリアならではの魅力だと思う。荘厳な雰囲気の境内から一歩出れば、すぐに人でにぎわう日常の風景が広がっている。この落差そのものが、いのりの物語が持つ「特別な夢」と「ありふれた日常」の共存を、実際の街並みとして体感させてくれる。フィギュアスケートという非日常の舞台を目指す少女の物語が、こんなにも生活感のある街から生まれているという事実に、あらためて胸を打たれる。
コメダ珈琲店 大須スケートリンク店、作中のヨネダ珈琲店
リンクと同じ建物、アーバニア大須の1階に入っているのが、コメダ珈琲店 大須スケートリンク店。作中では「ヨネダ珈琲店」として登場し、第10話で鴗鳥慎一郎、理凰、司、瞳の4人が席についてじっくり話し込むシーンの舞台になった。息子の一時的な指導を司に頼むという、物語が動き出す大事な場面だ。
店内にはフィギュアスケートにまつわる写真があちこちに飾られていて、リンクの階下にある喫茶店ならではの空気感が漂っている。営業時間は7:00〜20:00(ラストオーダー19:30)、1月1日以外は年中無休というのも聖地巡礼にはありがたいポイントだ。しかもリンクの利用者は滑走チケットを提示すると10%割引になるので、滑って、話して、休憩して、また滑る、という『メダリスト』の登場人物みたいな1日を実際に過ごすこともできる。おすすめメニューはエビカツパン、大須巡りの合間の一息にちょうどいい。
同じ建物の中にリンクと喫茶店が同居しているという立地そのものが、作中の人間関係の距離感をそのまま映し出しているようで面白い。氷の上での真剣勝負が終わったすぐあとに、階下の喫茶店で本音を打ち明け合う。そういう緩急のある物語運びを支えているのが、この建物の構造そのものだったんだと気づくと、コメダのコーヒー一杯にもちょっと違う味わいが生まれてくる。
大須商店街と裏門前公園、いのりたちの日常が息づく街並み
リンクを出て少し歩けば、約1,200店舗がひしめく大須商店街に出る。レトロな雰囲気と最新カルチャーが入り混じった独特の空気は、名古屋の中でもかなり異色で、いのりたちの日常シーンにたびたび登場している。商店街の入り口付近には、味噌カツで有名な矢場とんが手がける居酒屋もあって、聖地巡礼と一緒に名古屋グルメを楽しめるのも大須エリアならではの魅力だ。
商店街のすぐ近くにある裏門前公園も見逃せない。いのりがたい焼きを食べていたベンチのモデルと言われている場所で、ピンク色の富士山の形をした滑り台が特徴的だ。この富士山型の遊具は名古屋発祥と言われていて、地元の人には見慣れた風景でも、他県の読者からすると新鮮に映るはずだ。実際に座ってみると、いのりが感じていたであろう日常のささやかな幸せが、ちょっとだけ想像できる気がする。
せっかく大須まで来たなら、名古屋グルメを合わせて楽しむのも聖地巡礼の醍醐味だ。台湾ラーメンやきしめん、ひつまぶしといった名古屋名物の店が商店街の中やその周辺に点在していて、リンクで体を動かしたあとの空腹を満たすにはちょうどいい。いのりと司が練習の合間にどんな味を楽しんでいたのか、想像しながら食べ歩くのも、この作品ならではの巡礼の楽しみ方だと思う。
港区にも聖地あり、邦和みなとスポーツ&カルチャー
大須エリアだけでなく、港区にも重要な聖地がある。いのりのライバルである狼嵜光が所属する名港ウィンドFSCのホームリンクとして描かれているのが、港区の複合スポーツ施設「邦和みなとスポーツ&カルチャー」だ。バッジテストや名港杯の会場として作中にたびたび登場し、スケートリンク以外にも様々なスポーツ施設や屋外グラウンドを備えた大型施設になっている。「邦和」という名前でピンと来た地元の人もいるかもしれないが、これは東邦ガスグループ系列の施設という背景もあり、名古屋という土地に根ざした企業文化まで作品世界の裏側に透けて見えるのが面白い。
大須スケートリンクが下町の商店街に囲まれた庶民的な雰囲気だとすれば、邦和みなとスポーツ&カルチャーはより大規模で近代的な複合施設という印象で、いのりと光、それぞれの育った環境の違いが施設の空気感からもなんとなく伝わってくる。物語の対比構造が、こういう細部にまで宿っているのが『メダリスト』らしいところだ。
アクセスは地下鉄名港線「港区役所駅」から徒歩約5分。大須エリアとセットで回れば、いのりサイドと光サイド、両方の聖地を1日で制覇することも十分可能だ。ライバル同士がそれぞれ違うエリアを拠点にしているという構図が、実在の地理にもちゃんと反映されている。この作り込みの細かさに気づいたとき、思わず「よく考えられてるな」とつぶやいてしまった。
半日で回るなら、このルートがちょうどいい
聖地の数が多いからこそ、あらかじめ回る順番を決めておくと迷わずに済む。おすすめは地下鉄鶴舞線「大須観音駅」からスタートするルートだ。まず駅から徒歩5分の大須スケートリンク(名古屋スポーツセンター)へ向かい、いのりと司が出会ったリンクの空気を味わう。次に同じ建物内のコメダ珈琲店 大須スケートリンク店で一息つきながら、店内に飾られたフィギュアスケート関連の写真をチェックする。
そこから徒歩数分で大須観音へ移動し、いのりと大和絵馬が出会った場所の空気を感じたら、そのまま大須商店街をぶらぶら歩いて裏門前公園まで足を延ばす。ここまでで半日あれば十分に余裕を持って回りきれる距離感だ。時間と体力に余裕があれば、地下鉄で港区役所駅まで移動して、邦和みなとスポーツ&カルチャーまで足を伸ばすと、いのりサイドと光サイドの聖地を1日でコンプリートできる。
移動のほとんどが徒歩と地下鉄で完結してしまうのも、この聖地巡礼の気軽さを支えているポイントだ。レンタカーを借りる必要もなければ、長距離バスに揺られる必要もない。学校帰りや仕事帰りに寄り道するような感覚で、いのりと司が歩いた道を自分の足でなぞれてしまう。この距離感の近さこそが、『メダリスト』の聖地巡礼が他の作品と一線を画しているところだと思う。
巡礼で気をつけたいマナー、これだけは押さえておきたい
実在する施設を舞台にしている以上、そこには普段どおりの生活を送っている地元の人たちがいることを忘れてはいけない。大須スケートリンクは今も現役のスポーツ施設として使われているので、練習中の利用者や子どもたちの邪魔にならないよう、館内での写真撮影は最小限にとどめるくらいの気配りがちょうどいい。コメダ珈琲店では、他のお客さんが多い時間帯を避けて、注文をしてから写真を撮るくらいの余裕を持っておくと店員さんにも優しい。
大須観音のような宗教施設では、参拝している人の姿を無断で撮らない、大声で話さないといった基本的なマナーを守るのも当然のこと。大須商店街のように人通りが多いエリアでは、通行の邪魔にならない場所を選んで写真を撮るようにしたい。せっかく好きな作品の舞台を訪れるなら、地元の人からも歓迎される聖地巡礼にしていきたいものだ。
まとめ
名古屋という一つの街に、いのりと司の情熱がそのまま埋め込まれている。それが『メダリスト』の聖地巡礼を歩いていて一番強く感じることだった。氷の上のドラマだけを追いかけるんじゃなくて、その周りにある商店街や公園、喫茶店までセットで巡ると、物語の解像度が一気に上がる感覚がある。
架空の世界に憧れるのも楽しいけれど、実際に足を運べる場所に物語の続きが待っているというのは、それだけで特別な体験になる。いのりと司が悩んだり喜んだりした場所に、自分の足で立ってみる。それだけのことで、漫画を読んでいたときの感情がもう一段階、輪郭を持って迫ってくる。2027年公開の劇場版に向けて、今このタイミングで名古屋を歩いておくのは、単なる観光以上の意味を持つはずだ。最後に、この記事のポイントを3つにまとめておきたい。
大須スケートリンク(名古屋スポーツセンター)は、いのりと司が出会った運命の場所であり、伊藤みどりや浅田真央といった名選手たちも実際に練習した名門リンクという二重の意味を持っている
大須観音、コメダ珈琲店、大須商店街、裏門前公園など、リンクを中心にした徒歩圏内だけで聖地がぎゅっと密集しているので、無理なく1日で回りきれる
港区の邦和みなとスポーツ&カルチャーまで足を伸ばせば、ライバルである狼嵜光サイドの聖地も合わせて巡ることができ、物語の対比構造を実際の地理で体感できる
次の休みに名古屋へ行く予定がなかった人も、ここまで読んだ今、大須の地図を開きたくなっているんじゃないだろうか。実際にリンクの前に立ってみると、いのりと司が積み重ねてきた時間の重さが、ページの中で読んでいたときよりもずっとリアルに伝わってくる。
夢を諦めかけた大人と、まだ何者でもない子どもが、たった一つのリンクで出会って世界を目指していく。この構図は、フィギュアスケートに興味がなかった人の心にも、驚くほど素直に刺さってくる。努力とか才能とか、そういう言葉で片付けたくなる感情を、いのりと司はもっと泥臭くて熱いものとして見せてくれる。何者にもなれずにいる自分を重ねて読んでしまう人も、きっと少なくないはずだ。まだ『メダリスト』に触れたことがない人は、この機会にぜひ1話だけでも読んでみてほしい。氷の上で世界を目指す二人の物語と、その舞台になった名古屋の街の両方を知ったとき、読み終えたあとのあなたの毎日は、ちょっとだけ眩しく色づいているはずだから。
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