漫画『電影の龍』は、ヤクザという泥臭い現実と映画制作という夢の世界を融合させた、まさに新感覚の物語です。平成初期、閉塞感に包まれた田舎町で育った龍司と竜吉。俳優と映画監督という幼い頃の夢を抱えながら、現実は二人を容赦なく引き裂いていきます。
ヤクザとなり堕落した龍司、しかし、幼馴染みの竜吉が差し出したのは『自分の人生を映画にしよう』という突飛な提案でした。ここから始まる二人の『一生に一度の大芝居』は、観る者すべての心に強烈なインパクトを残します。
今回は、そんな『電影の龍』のネタバレ感想を含む感想をお届けします。
【電影の龍】あらすじ
人生をそのまま映画に収める、やくざになった男2人の映画譚「電影の龍」1巻https://t.co/hMRl71IgBX pic.twitter.com/VoEf4Ykscb
— コミックナタリー (@comic_natalie) January 20, 2025
親に捨てられヤクザになるしか生きる道がなかった龍司。俳優になる夢を捨てた絶望の日々は、親友・竜吉の提案で一変する。「お前の人生そのまま映画にしてやるよ」ヤクザの生き様をすべてカメラに収め、絶望の日々を逆転の日々に”写し”変える。新時代のフィルム・ノワール!!
【電影の龍】作品情報
電影の龍
著者
神田哲也
著者
清水海斗
カテゴリ
青年マンガ
出版社
講談社
レーベル
ヤンマガWeb
【電影の龍】ネタバレ感想
漫画「電影の龍」は、夢を追う若者たちの葛藤と反骨精神を軸にした物語でありながら、人生そのものを問い直すような深いテーマが描かれています。この作品の魅力は、何と言ってもその熱量と切実さにあります。主人公の龍司と竜吉が、俳優と映画監督という夢を抱きながらも、現実の厳しさに押しつぶされそうになる様子が、平成初期の息苦しい田舎という舞台設定の中で鮮烈に描かれています。
社会の底辺に追いやられる龍司
龍司がヤクザとなり、社会の底辺に追いやられていく様子は痛々しくもリアルで、彼自身が抱える自己嫌悪や諦念が胸に刺さります。しかし、そんな彼を立ち上がらせるのが幼馴染みの竜吉の存在です。竜吉の提案で「ヤクザとしての龍司の人生」を映画にするというアイデアは、一見荒唐無稽にも思えますが、そこには「自分たちの人生を、ただのゴミのように終わらせたくない」という強烈な意志が込められています。これこそが作品の核であり、二人がどこか滑稽で無謀でありながらも、圧倒的にかっこいい理由です。
「人生とは何か」「何が成功なのか」
映画制作という物語の中核を通じて、読者は「人生とは何か」「何が成功なのか」という問いを突きつけられます。龍司の破滅的な生き方を描きつつ、それを「映画」という形で表現することで、彼の人生がただの失敗談ではなく、唯一無二の物語として昇華される過程が描かれています。その過程で見えてくるのは、失敗や挫折にまみれた人生でも、それを全力で生き抜けば何かしらの価値を見出せるのではないか、というメッセージです。
荒んだ日常と希望
作者の描写力もこの作品の大きな魅力です。龍司の荒んだ日常や、映画制作に奮闘する様子が細やかに描かれる一方で、平成初期の片田舎特有の空気感が漂う背景や、登場人物たちの感情を浮き彫りにする演出は、物語にさらなる深みを与えています。また、映画制作のシーンでは、プロフェッショナルではない二人が試行錯誤しながら一生懸命に取り組む様子が微笑ましくも感動的で、「不器用でも情熱があれば何かを成し遂げられる」という希望を感じさせます。
「電影の龍」は、ただの青春ドラマやヤクザものではなく、「人生そのものが映画だ」という哲学的な視点を持った作品です。その哲学は、読み手に「自分の人生をどう撮るか」という問いを投げかけてきます。夢と現実、挫折と希望が交錯する中で、自分らしさをどう貫くのかを考えさせられるこの物語は、全力で生きることの美しさと尊さを教えてくれる一冊です。
【電影の龍】おすすめ読者
漫画「電影の龍」は、人生の挫折や葛藤、情熱を描いた作品であり、多くの人々の心に響く普遍的なテーマを持っていますが、特に以下のような読者におすすめです。
夢に挫折した経験のある人
夢を追いかけたものの、現実の壁にぶつかった経験を持つ人には、この作品のテーマが深く共鳴するでしょう。龍司と竜吉が過酷な現実の中で「映画制作」という形で夢を再燃させる姿は、再び立ち上がる勇気を与えてくれます。
地方の閉塞感を経験したことのある人
平成初期の片田舎を舞台にした作品なので、都会とは違う地方特有の息苦しさや、外に出られない感覚を経験したことのある人にとってはリアルに感じられる部分が多いでしょう。自分がいる場所の狭さや閉塞感に苦しむ人に、この作品は一筋の光を与えてくれるかもしれません。
映画やクリエイティブな表現が好きな人
映画制作が物語の中心にあるため、映画やクリエイティブな活動に興味がある人にも楽しめる作品です。プロではない主人公たちが、自分たちの手で「人生を映画にする」という挑戦を通して見せる不器用な情熱や創意工夫は、特に映像制作や表現に携わる人々にインスピレーションを与えるでしょう。
熱い友情や人間ドラマが好きな人
龍司と竜吉の関係は、ただの友情にとどまらず、互いに欠けた部分を補いながら前に進む「相棒」としての絆が描かれています。熱い人間ドラマや、互いを支え合う関係性を求めている人にとって、この二人の物語は非常に魅力的です。
現実の厳しさを受け止めつつ前向きになりたい人
「電影の龍」は、現実の厳しさや理不尽さを真正面から描きつつ、それでも人生には価値があると訴える作品です。何かに行き詰まっている人や、自分の生き方に疑問を感じている人には、この物語が前向きな力を与えてくれるでしょう。
この漫画は、ただエンターテインメントとして楽しむだけでなく、人生に対する新たな視点を提供してくれる一冊です。そのため、挫折や苦悩を抱えながらも、どこかで「自分の物語を生き抜きたい」と願うすべての人にぜひ読んでほしい作品です。
【電影の龍】ットの声

絵はカッコいいしセリフもところどころセンスは感じるし、かなり面白いただヤンマガにしては綺麗すぎるというか、グロもエロも薄いのでアウトロー物とは言え少年漫画感もあった。

ナリキンフットボールが終って新作が急にwebマンガで始まって、今度はサッカーの話ではなくヤクザが自主映画を撮る話。

平成初期の、家庭内虐待の問題が今ほど表面化してなかった時期のことがよく表されてると思いました。
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【電影の龍】最終話や結末話は
漫画「電影の龍」はまだ完結しておりません。
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