『別班の犬』とドラマ『VIVANT』はパクリ関係?共通点と違いを事実ベースで解説

このページにはプロモーションが含まれています

「これ、絶対どっちかが真似したよね」

SNSでこの手のセリフを見かけるたびに、正直ちょっとモヤっとする。今回のテーマはまさにそれ、漫画『陸上自衛隊特務諜報機関 別班の犬』と、堺雅人主演の大ヒットドラマ『VIVANT』の関係性だ。

自衛隊の中に存在するとも存在しないとも言われる謎の部隊「別班」。この言葉ひとつで検索欄がざわつくくらい、この二作品はセットで語られることが多い。ドラマ派の人が漫画の存在を知って「え、パクリじゃん」と驚いたり、逆に漫画を先に読んでいた人が「VIVANTって別班の犬まんまじゃない?」とモヤモヤしたり。どちらの気持ちもすごくよく分かる。似たモチーフ、似た緊張感、似た「日本にもこんな組織があるかもしれない」というゾクゾク感。似ていると感じるのは、むしろ自然な反応だと思う。

ただ、感覚で「パクリだ」「いや違う」と言い合っていても、いつまでも平行線のままだ。今回はあえて感情論を脇に置いて、連載開始日や放送日といった動かしようのない事実、そして両作品が実際にどういう題材から着想を得たのかという背景を、できる限り客観的に並べてみようと思う。読み終わる頃には、この「どっちが先?」論争そのものが、実はちょっとズレた問いだったことに気づいてもらえるはずだ。そしてついでに、漫画とドラマ、それぞれの魅力もしっかり掘り下げていく。両方まだ触れていない人は、この記事を読み終える頃にはきっとどちらも気になって仕方なくなっているはずなので、心の準備だけはしておいてほしい。

漫画『別班の犬』とドラマ『VIVANT』の公開時期を比較


パクリ論争を語るうえで、まず何よりも先に押さえておくべきなのは「時系列」だ。感覚や印象ではなく、公式に発表されている日付をベースに比較していく。

『陸上自衛隊特務諜報機関 別班の犬』の連載開始時期

久慈進之介氏による『陸上自衛隊特務諜報機関 別班の犬』は、講談社の青年漫画誌『イブニング』にて連載がスタートした作品だ。掲載開始は『イブニング』2022年5号で、これは2022年の2月ごろに発売されたタイミングにあたる。デジタル版はコミックDAYSで同時配信されており、単行本第1巻は2022年6月22日に発売されている。

作者の久慈進之介氏は、この作品以前にも『PACT』や『機械仕掛けのジュブナイル』といった作品を手がけてきた漫画家だ。『別班の犬』では、陸上自衛隊の精鋭部隊・特殊作戦群に所属していた女性隊員が、ある日謎の男から「別班」という部隊にスカウトされ、コードネーム「ナナ」としてスパイ活動の最前線に身を投じていく、という導入からスタートする。ハイスピードなアクションと、容赦のない暴力描写が組み合わさったスパイアクション漫画として、じわじわとファンを増やしてきた作品だ。

ドラマ『VIVANT』の放送時期

一方の『VIVANT』は、TBSテレビ系の看板枠「日曜劇場」で、2023年7月16日から9月17日にかけて放送されたテレビドラマだ。主演は堺雅人、共演に阿部寛、二階堂ふみ、役所広司、松坂桃李といった豪華な顔ぶれが揃った。商社員である主人公が、130億円という巨額の誤送金をきっかけに謎の国「バルカ」へと足を踏み入れ、やがて自身が「別班」と呼ばれる自衛隊の非公式諜報部隊の一員だったことが明かされていく、というスケールの大きなストーリーが展開された。放送当時から「2023年最高のドラマ」との呼び声も高く、翌年以降も続編を望む声が絶えなかった作品で、実際に2026年7月26日からは待望の続編が同じ日曜劇場枠で放送されている。

結論:時系列で見るとどちらが先か

ここまでの日付を並べるだけで、答えはかなりはっきりする。

漫画『別班の犬』の連載開始は2022年2月ごろ。対してドラマ『VIVANT』の放送開始は2023年7月。その差、実に1年5か月ほどだ。単純な「先に世に出たのはどちらか」という意味では、漫画の方が明確に先行している。

ここだけを切り取ると「じゃあやっぱりVIVANTが別班の犬をパクったのでは」と思う人もいるかもしれない。気持ちはよく分かる。ただし、ここで絶対に見落としてはいけないポイントがある。それは「公開時期」と「制作・企画がスタートした時期」はまったく別物だという点だ。

テレビドラマという媒体は、脚本の構想からクランクイン、撮影、編集、そして実際のオンエアまでに、通常でも1年以上のスパンがかかる。しかも『VIVANT』は制作費が1話あたり通常の3倍近い規模で組まれた大型企画だったと報じられており、海外ロケを含む大掛かりな作品だ。となれば、企画そのものはもっと以前から動いていたと考えるのが自然だろう。

実際、『VIVANT』で監督と原作を務めた福澤克雄氏は、放送開始前のインタビューで、制作開始のおよそ3年前に車のラジオで「別班」というキーワードを耳にしたことが、この物語の着想のきっかけになったと明かしている。3年前というと、2020年前後の話だ。つまり、漫画『別班の犬』が連載を始めた2022年よりも早い段階で、すでに福澤氏の頭の中には「別班」というモチーフが存在していたことになる。

放送日だけを見れば漫画が先。でも着想のタイミングで見れば、実はほぼ同時期、あるいはドラマの構想の方がわずかに早かった可能性すらある。この事実だけでも、「片方がもう片方を見てから作った」という単純な後追い構造ではなく、それぞれが独立して同じ土壌からアイデアを拾い上げた、と考える方がずっと筋が通っている。

「自衛隊の影の組織」という共通テーマの背景

ここが今回の記事でいちばん伝えたいポイントかもしれない。なぜ二つの作品は、示し合わせたわけでもないのに、こんなにも似たテーマにたどり着いたのか。その答えは、実は作品の外側、つまり現実の日本社会にすでに存在していた。

「別班」とは何か、その正体をめぐる長年の噂

「別班」という言葉自体は、実は漫画やドラマが生み出した完全なオリジナル用語ではない。もともとは、陸上自衛隊の内部に存在するとされる非公式の情報部隊を指す通称として、報道や識者の間で以前から使われてきた言葉だ。報道で伝えられている正式名称は「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」とされており、自衛隊の公式な組織図には載らない、非公然の部隊であるとされている。

この組織については、政府はこれまで一貫して「存在していない」という立場を取り続けてきた。『VIVANT』が放送されていた2023年7月にも、当時の防衛大臣が記者会見で改めて「これまでも現在も存在していない」と明言している。一方で、防衛庁長官や防衛大臣を歴任した政治家の中には、週刊誌の取材に対して「存在している」と語った人物もいるとされ、政府の公式見解と、一部の証言や報道内容との間には、長年ズレが存在し続けている状態だ。

さらに軍事ジャーナリストへの取材や、共同通信による報道、国会で提出された質問主意書などを通じて、「別班」の存在をめぐる話は、実はVIVANTのヒットよりもずっと前、少なくとも2000年代から断続的にメディアで取り上げられてきたテーマだった。旧日本陸軍の情報機関「陸軍中野学校」の流れを汲む組織ではないかという識者の見立てもあり、都市伝説と実話報道のちょうど境界線上に位置するような、なんとも言えない引力を持ったモチーフなのだ。

なぜクリエイターは同じモチーフに惹きつけられるのか

つまり「自衛隊の中に、誰も存在を認めない秘密の諜報部隊がある」という設定は、漫画やドラマが生み出したファンタジーではなく、現実の報道や噂話としてずっと日本社会の片隅に転がっていた「ネタ」だったということになる。

これは創作の世界ではよくあることだ。都市伝説や未解決事件、社会の裏側にあると噂される組織といったモチーフは、いわば誰でも自由に使える公共の素材のようなもので、複数のクリエイターが同時多発的に着目することは珍しくない。UFOや都市伝説を扱った作品が同じ時期にいくつも生まれたり、実在の詐欺事件をモチーフにした映像作品が続けて発表されたりするのと構造はまったく同じだ。

久慈進之介氏が「別班」という実在の噂に着目して漫画を描き、福澤克雄氏が同じく「別班」という言葉をラジオで耳にしてドラマの構想を練った。二人がそれぞれ独立して同じ井戸から水を汲み上げただけで、片方がもう片方の作品を見て真似をしたわけではない、と考える方が、時系列的にも状況的にもずっと自然だ。

しかも「別班」自体が政府によって存在を否定され続けている、いわば公式には認められていない題材だからこそ、逆にクリエイターの想像力を強烈に刺激する側面もある。「本当にあるかもしれないのに、誰も認めない」という宙ぶらりんな状態は、フィクションにとって最高の余白になる。この余白に、それぞれの作家が独自の物語を注ぎ込んだ結果が、『別班の犬』でありVIVANTだった、というのが実態に近いのではないだろうか。

似ているのは「設定」であって「物語」ではない

ここまで読んでもらえれば分かる通り、二作品が共有しているのはあくまで「自衛隊に非公式の諜報部隊が存在するらしい」という土台部分の設定だけだ。この土台の上に、それぞれの作家がまったく異なる建物を建てている。次の章では、その建物の中身、つまりストーリーやキャラクターの違いを具体的に見ていく。ここを知らずに「似てる」で終わらせてしまうのは、正直かなりもったいない。

ストーリー展開やキャラクター設定の決定的な違い

共通のモチーフから出発しているとはいえ、実際に読んだり観たりすると、この二作品はかなり毛色が違う。物語の温度感、主人公の立ち位置、描かれる恐怖の種類まで、細部を比較していくとその違いは驚くほどはっきりしている。

主人公の立ち位置がまったく違う

まず主人公の設定からして対照的だ。

『別班の犬』の主人公ナナは、もともと陸上自衛隊の精鋭部隊・特殊作戦群に所属していた現役の女性隊員だ。訓練漬けの日々に物足りなさを感じていたところをスカウトされ、自らの意思で「別班」の世界に足を踏み入れていく。つまり彼女は最初から「戦う側」の人間であり、物語のスタート時点ですでに一定の戦闘スキルと自衛隊員としての矜持を持っている。読者は最初から彼女と一緒に、暴力と諜報の世界にどっぷり浸かっていくことになる。

対して『VIVANT』の主人公・乃木は、物語の序盤では商社員として登場する。130億円もの誤送金という、ある種サラリーマン的な巻き込まれ方から物語が動き出し、視聴者は「なぜ主人公は謎の国に送金しているのか」「なぜ彼はこんなに戦闘や潜入工作に慣れているのか」といった謎を、少しずつ解き明かしていく構成になっている。実は彼こそが別班の諜報員だった、という事実が中盤で明かされる衝撃は、VIVANTという作品の大きな仕掛けのひとつだ。

つまり『別班の犬』は「最初から別班の内側にいる人間」の視点で描かれるのに対し、『VIVANT』は「実は別班の内側にいた人間」であることが後から判明する構成になっている。この視点の置き方の違いだけでも、物語の緊張感の作り方はまったく異なるものになる。

物語のジャンルとトーンの違い

作品全体の温度感も大きく異なる。

『別班の犬』はスパイアクション漫画としての骨格がとにかく強い。国際テロ組織との攻防、武装組織との市街戦、暗殺任務といった要素が容赦なく描かれ、残酷描写やグロテスクな表現も含まれている。読んでいて息をつく間もないくらい、ハイスピードで畳みかけてくるタイプの作品だ。良くも悪くも「フィクションとしてのスパイアクション」を突き詰めた娯楽性の高さが魅力になっている。

一方の『VIVANT』は、サスペンスとヒューマンドラマの比重がかなり高い。主人公とその実の父親との関係、公安の刑事との駆け引き、モンゴル的な中央アジアの架空国家を舞台にした異文化描写など、家族愛や信念の対立といったウェットな人間ドラマが物語の推進力になっている部分が大きい。派手なアクションシーンもあるが、それ以上に「誰が味方で誰が敵なのか分からない」心理戦の緊張感や、実の父子が対立せざるを得ない悲劇性が、この作品の核になっている。

同じ「別班」という設定を使っていても、片方は容赦のないバイオレンスアクション、もう片方は家族の絆をめぐる社会派サスペンスドラマという、まったく異なるジャンルの物語として成立している。これはもう、モチーフが同じというだけで「同じ作品」と呼ぶにはあまりに無理があるレベルの違いだ。

敵の造形とスケール感の違い

敵対勢力の描き方にも明確な差がある。

『別班の犬』では、国際テロ組織や武装勢力といった、現実の国際情勢を思わせるようなリアル寄りの脅威が次々と登場し、ナナたちはそれらと直接的な戦闘を繰り広げていく。地に足のついた、生々しい暴力の応酬がこの作品の見どころのひとつだ。

『VIVANT』の敵対勢力である国際テロ組織「テント」は、そのリーダーが主人公の生き別れた実の父親であるという、血縁というきわめて個人的なドラマと直結した存在として描かれている。組織対組織の戦いというよりも、父と子という最小単位の人間関係の中に、国家規模の陰謀が入り込んでくる構図になっている。スケールの大きさと、その裏にある個人的な痛みの両方を同時に描くバランス感覚こそが、VIVANTという作品の脚本の巧みさだと言える。

読者・視聴者に与える読後感の違い

こうして並べてみると、『別班の犬』は「知られざる組織を舞台にした本格スパイアクション」を、『VIVANT』は「家族の絆を軸にした骨太な社会派サスペンス」を、それぞれ全力で追求した作品だということが見えてくる。

出発点の設定が似ているからといって、その先にあるゴールも同じだと考えるのは、正直かなり早計だ。同じ「学校」という舞台を使った作品が世の中に無数にあるのと同じで、共通の土台があるからこそ、その上にどんな物語を構築するかという作家の個性がむしろ際立って見えてくる。今回の二作品は、まさにその好例と言っていい。

まとめ

ここまで、公開時期、共通テーマの背景、ストーリーとキャラクターの違いという3つの角度から、『別班の犬』と『VIVANT』の関係性を見てきた。最後に、今回の検証で分かった重要なポイントを3つに整理しておく。

1つ目、公開のタイミングだけを見れば漫画『別班の犬』の連載開始の方が早いが、ドラマ『VIVANT』の監督は制作開始の3年前にはすでに「別班」というモチーフに着想を得ていたと語っており、企画段階ではほぼ同時期、あるいはそれ以上に早かった可能性がある。少なくとも、一方がもう一方を見てから作ったと断定できるような単純な時系列ではない。

2つ目、両作品が共有する「自衛隊に存在するとも存在しないとも言われる秘密の諜報部隊」という設定は、そもそも創作の世界だけの話ではなく、現実の報道や政府答弁、識者の証言といった形で以前から日本社会に存在していた実在の噂だった。二人の作家が、それぞれ独立してこの現実の題材に着目した結果、似たテーマの作品が近い時期に生まれた、と考えるのが最も自然な説明だ。

3つ目、共通しているのはあくまで「設定」というスタートラインだけで、そこから描かれる物語はまったく別物だ。『別班の犬』は現役自衛官の視点から描かれる容赦のないスパイアクション、『VIVANT』は自らの正体を知らない主人公が家族の秘密と向き合っていく社会派サスペンス。ジャンルも読後感も、はっきりと別々の方向を向いている。

「パクリかどうか」という問いは、実はあまり本質的ではなかったのかもしれない。むしろ「同じ現実のモチーフから、まったく違う魅力を持つ二つの傑作が生まれた」という事実の方が、よっぽど面白い。

もしまだ『別班の犬』を読んだことがないなら、ナナと共に非情なスパイの世界に飛び込む緊張感を、ぜひ味わってみてほしい。逆にVIVANTしか観たことがない人は、あの独特な緊迫感の原型ともいえる「別班」というモチーフが、漫画の世界でどんな進化を遂げているのか、確かめてみる価値は十分にある。パクリ論争なんてもうどうでもよくなるくらい、どちらの作品にもそれぞれの世界に引きずり込む力がある。あとは実際にページをめくるか、再生ボタンを押すか、それだけだ。

▼合わせて読みたい記事▼

アニメ化した作品はAmazon Prime Videoが良い理由!
漫画やアニメを楽しむためにお得な方法をお伝えします!アニメ化した作品を楽しむならAmazonプライムがおすすめな理由を紹介したいと思います。それでは詳しく見ていきましょう!ネットをよく利用する方の中には「Amazonプライム会員はお得!」と...
【ハピタス】漫画を買うのにお金が必要!在宅で出来るポイ活!
漫画ブームは、世界中で広がっている現象です。特に近年、漫画は世界的なポップカルチャーとして注目を集め、多くの人々に愛されています。多種多様なジャンルの漫画が発売しており、思わず衝動買いしたくなってしまいます。本記事では漫画を買いたくてもお金...