『回撃のキナト』打ち切りの噂はなぜ?掲載順と読者評価から今後を予想

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「回撃のキナト」と検索窓に打ち込むと、予測変換に高確率で並ぶあの二文字。打ち切り。作品名の隣にこの単語が居座っているのを見るたび、胸のあたりがキュッとなるジャンプ読者は少なくないはずです。

まだ物語は序盤、キナトの整体魔術がようやくバトルの武器として輪郭を持ちはじめたところなのに、ネットの空気はすでに「いつ終わるか」の話をしている。この温度差、けっこうきついものがあります。ただ、感情だけで擁護しても、感情だけで叩いても、作品の現在地は見えてきません。

この記事では、連載開始からの掲載順というシビアで嘘をつかない数字、ネット上で真っ二つに割れている読者の声、そして単行本まわりで起きているちょっと不思議な現象を並べたうえで、『回撃のキナト』がここからどう戦えば生き残れるのかを、できるだけフラットに、そして最後は前を向いて考えていきます。

読み終わるころには、「あ、そういうことだったのか」と少しスッキリして、ついでにジャンプを開きたくなるはずです。

掲載順の推移が示す『回撃のキナト』の客観的な現在地


打ち切りの噂を語るうえで、感想やイメージより先に見るべきものがあります。掲載順です。週刊少年ジャンプという雑誌は、読者アンケートの結果が誌面の並び順に反映される仕組みで長年運営されてきました。もちろん巻頭カラーやセンターカラーの都合、周年企画、アニメ化のタイミングなど、順番を動かす要素はアンケート以外にもいくつもあります。それでも、数か月単位で均してみたときの平均掲載順は、その作品が今どのくらい支持されているかをかなり正直に映し出します。ここでは感情を一度脇に置いて、キナトが歩いてきた道のりを数字で追いかけてみます。

華々しいスタートから、思ったより早く訪れた失速

『回撃のキナト』は2026年2月2日発売の週刊少年ジャンプ2026年10号でスタートしました。「塗り替えろ、面白さの新常識!Jニュークラシック新連載3連弾」という景気のいいキャッチコピーの第2弾という扱いで、連載開始に合わせて公式PVまで公開されています。作者は雨宮ケント先生。以前にジャンプ本誌で『累々戦記』を連載していた経歴を持つ、いわば二度目の登板組です。編集部としても、それなりに期待値を込めて送り出した枠だったことがうかがえます。

新連載というのは基本的に、最初の数話は上位に配置されます。読者に存在を認知してもらう必要があるので、当然の措置です。キナトも例に漏れず、序盤は中位から上位を行き来していました。問題はここからで、アンケート結果が誌面に反映されはじめる時期、つまり掲載開始から1か月半ほど経ったあたりから、じわじわと位置を下げていきます。

新連載作品の掲載順で一番わかりやすい健康診断は、2回目のセンターカラーがいつ来るかという点です。ジャンプの慣例として、10話前後で2度目のセンターカラーが配られる作品はアンケートが好調、逆にそこで配られない作品は雲行きが怪しい、という見方が読者のあいだで定着しています。キナトは20話を迎えた時点でも2度目のセンターカラーが巡ってきませんでした。この一点だけで、ネット上の空気が「打ち切り候補」に固まっていったのは、ある意味で自然な流れです。

11話のワースト2という、決定的な分岐点

流れが決定的に変わったと語られているのが11話です。この回でキナトは掲載順がワースト2まで落ち込みました。しかも、その週の最下位がすでに終了の決まっていた作品だったため、実質的には最下位と同じ扱いだと受け止められました。

ジャンプの打ち切りを長年観測している読者のあいだには、経験則として共有されている法則があります。連載10話前後というのは、初期の勢いが完全に消え、純粋なアンケート実力だけで順位が決まりはじめる時期。ここでワースト圏に沈んだ作品は、その後に持ち直すことなく終了へ向かうケースが圧倒的に多い。だからこそ、11話のワースト2という数字はファンにとって重たいニュースでした。「打ち切り候補」ではなく「打ち切り最有力候補」という物騒な呼ばれ方をされるようになったのも、このあたりからです。

さらに追い打ちをかけたのが、2026年20号あたりの誌面配置です。この号ではワースト圏に打ち切り候補と目される作品が固まって配置され、あたかも編集部が「次にどれかを終わらせます」と予告しているかのような並びになっていました。そこにキナトの名前もしっかり入っていた。読者の視線は否応なく厳しくなります。

春から夏へ、最下位圏での長い膠着

その後の推移も、率直に言って楽観できるものではありません。25号前後では最下位が数週連続という状況に入り、夏の改編に向けた打ち切り最右翼のひとつとして名前が挙がり続けました。

数字で見てみます。2026年35号時点での直近8週の掲載順を並べると、17位、20位、19位、20位、20位、20位、18位、18位。8週平均はちょうど19.00です。20作品前後で構成される誌面の中で平均19位というのは、ほぼ定位置がワースト圏という意味になります。ここは正直に受け止めるしかありません。

ただ、この並びをもう少しよく見ると、面白い変化が読み取れます。20位が4回続いたあと、直近2週は18位で止まっているのです。ドベを回避している。掲示板でも「キナトがドベ回避してるじゃん、これで次期の打ち切り回避の可能性も出てきたか」という反応が出ていました。もちろん、その後の36号ではまた最下位に戻っており、上向きのトレンドと呼べるほど明確なものではありません。それでも、真っ逆さまに落ち続けているのではなく、最下位圏という狭いレンジの中で小さく上下しながら踏みとどまっている、というのが正確な描写になります。ズルズル沈んでいるのではなく、水面ギリギリで足をバタつかせている状態です。

ネット上で語られる「41号終了説」の正体

ジャンプ考察系のコミュニティを覗くと、かなり具体的な終了時期の予想が流れています。40号で新連載1本目、41号で新連載2本目、その枠を空けるためにキナトが終了する、といった読みです。この手の予想は、新連載の投入ペース、周年企画やアニメ化に合わせた巻頭カラーのスケジュール、現行作品の掲載順といった材料から逆算して組み立てられており、精度もそれなりに高いことで知られています。

ただし、ここは強調しておきたいところです。これらはあくまで読者による予想であって、集英社や編集部からの公式発表ではありません。2026年8月時点で、『回撃のキナト』の終了は一切告知されていません。公式サイトの表記は今も連載中のままです。予想が当たることもあれば、外れることもある。そして外れる理由の多くは、外部からは見えない数字が動いたときです。電子版の閲覧数、単行本の売上、海外での反応。誌面の並びだけがすべてを決めているわけではありません。

単行本1巻の重版という、数字のねじれ現象

そして、ここがこの作品を語るうえで最高に面白いポイントです。掲載順が最下位圏で低迷している一方で、単行本まわりの数字はまったく違う顔をしています。

単行本1巻は2026年6月4日に発売されました。発売初日のPOSデイリーランキングで17位という数字を記録しています。同時期のジャンプ新連載組と比べると特別に高いわけではありませんが、「掲載順ワースト常連の作品としては大健闘」と評される水準でした。掲載順だけを見ていた人ほど、この数字には目を丸くしたはずです。

さらに驚きは続きます。2026年6月17日、少年ジャンプ編集部の公式アカウントが、1巻の重版出来を告知しました。7月3日に重版がかかる、と。重版というのは初版が売り切れそうだから追加で刷る、という意味です。打ち切り最有力候補という評判の作品に重版がかかる。この不一致は、当時ネット上でもちょっとしたざわつきを生みました。

そして2026年8月4日、単行本2巻が発売されています。収録内容は、キナトがギルド「鉄の牙」に無事入団し先輩たちと任務をこなす中で新たな敵と遭遇するパート、そしてジエンが所属する王国評議会「12席(カウンシル)」で魔術士の失踪事件が議題に上がるパートです。物語が個人の成長編から、国家規模の陰謀へと接続されようとしている段階だとわかります。畳みに入っている作品の巻末が、こういう風呂敷の広げ方をするかというと、ふつうはしません。ここは注目に値します。

掲載順と売上、どちらを信じるべきか

掲載順は低い。でも本は売れて重版までかかった。この矛盾をどう読むか。

ひとつの解釈は、アンケートを出す層と単行本を買う層がズレている、というものです。ジャンプのアンケートを毎週律儀に送るのは、良くも悪くも雑誌を追いかけ続けている熱心な読者層です。一方で単行本を買うのは、まとめて読みたい層、電子で偶然出会った層、SNSで話題になっているのを見て手に取った層など、もっと広い母集団になります。キナトは前者の評価が伸び悩む一方で、後者にはそれなりに刺さっている。そういう構図が見えてきます。

もうひとつの解釈は、この作品が「週刊で毎回引きを作る」形式との相性が良くない、というものです。1話ごとの熱量よりも、まとめて読んだときのテンポの良さで真価を発揮するタイプ。実際、序盤の感想として「2ページごとのバランスが良くてテンポがいい」という指摘が出ていました。ページの構成が計算されていて読みやすい、というのは単行本でこそ味わえる長所です。

どちらにせよ、確かなのは、掲載順という一枚の指標だけでこの作品の価値を決めつけるのは、少し乱暴だということ。数字は数字として受け止めつつ、その裏側で何が起きているのかを見る。それがフェアな読み方だと思います。

面白い派とつまらない派、真っ二つに割れた評価の中身を解剖する

さて、掲載順という外側の数字を見終えたところで、今度は中身の話です。『回撃のキナト』ほど、ネット上の評価が両極端に振れた新連載も珍しい。「1話で切った」という声と「4話から化けた」という声が同じタイムラインに並んでいる状態です。どちらかが間違っているわけではなく、それぞれが違う場所を見ている。ここではその両方の言い分を、なるべく公平に並べていきます。

つまらない派の言い分1「設定に既視感がありすぎる」

否定的な意見の中で圧倒的に多かったのが、設定の既視感です。万物に流れるエネルギー「魔力」、それを操る「魔術士」、冒険者ギルド、奴隷として拉致される主人公、そこで出会う実力者との師弟関係。ひとつひとつを取り出すと、web小説やライトノベルで何度も見てきた組み合わせです。1話の感想として「なろう系テンプレ」という言葉が飛び交ったのも、無理からぬところがあります。

しかもジャンプという雑誌は、ファンタジー枠の競争が異常に激しい戦場です。読者の目は肥えきっていて、序盤の数ページで「あ、これ知ってる構造だ」と判断されると、そこから挽回するのがとても難しい。キナトはこのハードルを最初の1話で越えきれなかった、というのが冷静な見立てになります。

つまらない派の言い分2「展開が古い、テンポが読めない」

もうひとつ挙がっていたのが、展開の運び方に対する指摘です。冒険者協会での登録試験、日没までに10人助けろという課題、といった流れは丁寧ではあるものの、良く言えばオーソドックス、率直に言えば少し古い。週刊連載のスピード感を求める読者からすると、「ここでその話をやるのか」と感じる瞬間があった。

また、中盤以降の展開について「話の進み方が滅茶苦茶」「キャラの動機とやっていることが噛み合っていない」という感想も出ていました。前作『累々戦記』でバトル描写に定評があった作者だけに、期待していた方向と実際に届いたものがズレた、というタイプの落胆です。期待が高かったぶん、反動も大きかった。

つまらない派の言い分3「主人公の役割がわかりにくい」

キナトの魔術は整体魔術。相手の魔力の流れを整えて不調を治す、いわばサポート特化の能力です。公式のキャッチコピーも「最強サポート魔術士ファンタジー」。この設定自体は独創的で、多くの読者が「面白そう」と反応しました。

ただ、少年漫画の主人公としては扱いが難しい能力でもあります。殴って勝つのではなく、整えて勝つ。この理屈をバトルの中で気持ちよく成立させるには、かなり緻密な設計が必要になります。序盤では、その面白さが十分に伝わりきらないまま話が進んだ場面もありました。「せっかくの独自設定が活きていない」という不満は、むしろ設定を気に入った人ほど強く感じた部分です。

面白い派の言い分1「画力が本物、そこは誰も否定できない」

一方で、否定的な感想を書いている人ですら例外なく認めているのが作画です。「画力は高い」という評価は、1話の時点から一貫して出ていました。キャラクターの表情、モンスターのデザイン、魔術のエフェクト、そしてコマ割り。特に見開きの使い方と、ページをめくったときの視線誘導がうまい。

前述した「2ページごとのバランスが良くテンポが良い」という指摘は、単なる印象論ではなく構成技術への評価です。右ページで情報を出し、左ページで溜めを作るか物語を進める、というリズムが意識的に作られている。漫画としての基礎体力が高い作品であることは、掲載順とは関係なく事実として存在しています。

面白い派の言い分2「4話からの路線変更で化けた」

評価が動いたポイントとして必ず名前が挙がるのが4話です。この回で、整体魔術という設定にサービス精神を加えた見せ方に舵が切られました。相手の体に触れて魔力の流れを整えるという行為の性質上、どうしても密着した描写になる。そこを隠すのではなく、むしろ作品の武器として押し出す方向に振り切ったわけです。

この転換に対する反応は、これまた真っ二つでした。「そういう方向に行くのか」と離れた人もいれば、「開き直ったおかげでこの作品にしかない色が出た」と評価した人もいます。少なくとも、1話の時点で感じられた「よくあるファンタジー」という印象は薄れました。差別化という一点においては、明確に機能したと見ています。

そして重要なのは、この路線変更が単行本の売上や重版につながっていった可能性がある、という点です。掲載順は動かなかったけれど、別の層には届いた。数字のねじれの正体は、案外このあたりにあるかもしれません。

面白い派の言い分3「熱い展開はちゃんと熱い」

そしてもうひとつ、地味だけれど見過ごせない長所があります。この作品、熱い場面は本当に熱い。

キナトが自分の能力にコンプレックスを抱えながらも、それでも誰かを助けるために使うと決める瞬間。ギルドの先輩たちとの、ぶっきらぼうだけど確かな信頼が通っているやりとり。ジエンという圧倒的な実力者が、まだ何者でもない少年に手を差し伸べる場面。こういう王道の熱さは、雨宮ケント作品の芯にあるものです。前作でバトル描写を評価されていたのも、突き詰めればこの熱量の作り方がうまいから。

「設定は古い、でも熱い場面で泣かされた」という感想が一定数あるのは、この作品の本質を突いていると思います。オリジナリティの勝負では劣勢でも、感情の勝負ではちゃんと殴り返している。

海外で起きた炎上と、その後の空気

評価を語るうえで避けて通れない出来事もありました。5話の描写をめぐって、海外の一部読者から批判が起こったのです。整体魔術で他者の状態を「整える」という設定が、ある文脈では特定の属性を矯正する行為として受け取られてしまい、SNSを中心に強い反発が広がりました。

作品の意図がそこにあったのかどうかは、作中の描写だけから断定できるものではありません。ただ、こうした騒動が起きたこと自体は、新連載にとって決して軽くない出来事でした。国内の掲載順とは別の場所で、作品のイメージに影響が出た。海外の反応が作品の評価軸に組み込まれつつある現在のジャンプ環境では、この種のリスクは常について回ります。

その後、この件が長く尾を引いている様子はありません。ただ、検索候補に打ち切りと並んで炎上という言葉が残ってしまうのは、作品にとっては不運な話です。事実は事実として記録しておきつつ、それだけで作品を判断しないでほしい、というのが率直なところです。

両方の意見を並べて見えてくるもの

否定派と肯定派、それぞれの言い分を並べてみると、ある構図が浮かび上がります。

否定派が見ているのは「入口」です。1話の設定、序盤の展開、既視感。ジャンプという雑誌では、この入口の勝負に負けると挽回が極めて難しい。そして実際、キナトはこの勝負で不利なスタートを切りました。

肯定派が見ているのは「中身」です。作画の安定感、構成のうまさ、路線変更後の独自色、そして熱い場面の破壊力。数話ぶん読み進めた人ほど、評価が上向いている傾向がはっきりあります。

つまり、この作品の最大の課題は「面白くなるまでのハードルが高い」という一点に集約されます。読み進めた人からの評価は決して低くない。でも、そこまで辿り着く人が少ない。これは作品の質の問題というより、届け方の問題です。そして、届け方の問題は、まだ改善の余地がある問題でもあります。

ここから連載を伸ばすための生存戦略を本気で考える

ここからは完全に筆者の考察です。数字も声も一通り見たうえで、『回撃のキナト』がこの先も戦い続けるとしたら、どこに勝機があるのか。願望まじりであることは認めつつ、それなりに真面目に考えてみます。

戦略1 整体魔術を「バトルの答え」に据え直す

この作品最大の資産は、やはり整体魔術という発想です。攻撃力ではなく調整力で戦う主人公。これは他のどのジャンプ作品とも被りません。

問題は、この能力の面白さが「相手を治す」段階で止まりがちだったことです。ここから先、勝機があるとすればこの一点にあります。整体という行為を、もっと攻撃的に、もっと戦術的に翻訳し直すこと。

たとえば、敵の魔力の流れを「整えすぎる」ことで暴走させる。仲間の魔力経路を戦闘中にリアルタイムで最適化して、格上相手に一時的な逆転を演出する。あるいは、自分の体を限界まで整えることで、サポート型のはずの主人公が瞬間的に前線に立つ。こういう「その手があったか」を積み重ねられれば、能力バトルとしての中毒性が一気に上がります。

ジャンプの歴史を振り返れば、能力の使い方の妙で読者を掴んだ作品は数えきれません。整体魔術は、そのポテンシャルを十分に秘めた設定です。あとは調理法だけ。

戦略2 「12席」という残された大ネタを使い切る

2巻の内容紹介で明かされた要素の中に、大きな鍵があります。ジエンが所属する王国評議会「12席(カウンシル)」、そしてそこで議題に上がった魔術士の失踪事件です。

12という数字が出てきた時点で、読者は構造を理解します。序列があり、それぞれに個性があり、そのうち何人かは敵で、何人かは味方になる。ジャンプ読者が大好きな構造です。そして魔術士の失踪事件という縦軸は、キナト自身が物語冒頭で奴隷として捕まった経緯とまっすぐ繋がる可能性を持っています。

つまり、序盤で「テンプレ」と切り捨てられた設定が、実は物語全体の伏線として機能する構造になっている。奴隷にされた少年が、その事件の背後にある国家規模の陰謀に辿り着く。この回収がうまく決まれば、序盤に感じられた既視感は「あの導入は意図的だったのか」という納得に変わります。

畳みに入る作品は、こういう風呂敷を新たに広げません。2巻の時点でこの要素が提示されているという事実は、少なくとも作者と編集部が物語を先へ進める意思を持っていた証拠だと受け取っています。

戦略3 ジエンという「格」を活かしきる

キナトを冒険者の世界に引き込んだギルド「鉄の牙」の団長ジエン。この人物の存在感は、この作品の隠れた武器です。

少年漫画において、圧倒的な実力を持つ大人が主人公を信じ続ける構図は、それだけで強い。読者はその大人の目を通して主人公を見るようになるからです。ジエンが「こいつには何かある」と思い続けるかぎり、読者もキナトの成長を待つ気持ちになれる。

そしてジエンが12席という国家の中枢に属しているのなら、キナトの物語は必然的に大きな舞台へ接続されていきます。田舎町の整体師から、国を揺るがす事件の中心へ。このスケールアップこそ、少年漫画の醍醐味そのものです。

戦略4 単行本という戦場で勝ち続ける

現実的な話をします。掲載順が下位に沈んだ作品が延命した例は、ジャンプの歴史の中で確かに存在します。その多くに共通しているのが、単行本の売上でした。

キナトはすでに、その戦場で結果を出しています。1巻は発売初日のPOSデイリーで17位、そして重版出来。この事実は、編集部の判断材料として決して軽くありません。雑誌のアンケートは伸びないけれど、本は売れる。この形は、掲載順という一次的な指標を上書きし得る数少ないカードです。

そして2巻が2026年8月4日に発売されたばかり。この巻の売上が1巻を維持、あるいは上回るようなら、状況が変わる可能性は確実にあります。応援したい人にとって、いま最も直接的な行動は、アンケートを出すことと単行本を買うこと。この二つに尽きます。

戦略5 「刺さる層」に届く導線を作る

この作品の評価を分けているのは、繰り返しになりますが入口です。1話で切られやすく、4話以降で評価が上がる。だとすれば、勝負どころは「4話まで読ませる導線」をどう作るかになります。

すでに公式は手を打っていました。連載開始時のPV、そして2026年4月21日にジャンプチャンネルで公開されたボイスコミック。声と音がつくと、キャラクターの魅力は何倍にも伝わります。整体魔術という視覚的にわかりやすい題材は、動画コンテンツとの相性が良い。この方向の展開が続けば、雑誌を追っていない層に届く可能性はまだ残っています。

そしてもうひとつ。単行本1巻の発売時には、鈴木祐斗先生からコメントが寄せられていました。同じ雑誌で戦っている作家からの推薦は、読者にとって強い動機になります。作品の外側からの後押しが、確かに存在している。

もし終わることになったとしても、残るもの

最後に、少しだけ厳しい話もしておきます。予想どおりの結末になる可能性は、正直に言えば低くありません。掲載順の推移は厳しく、ネット上の予想も具体的です。

ただ、それでもこの作品が無駄になることはありません。雨宮ケント先生は前作『累々戦記』を19話で終え、それでも二度目の連載を勝ち取った作家です。一度失敗しても戻ってきた。この事実こそが、いま最大の希望になります。

『回撃のキナト』で得たもの、たとえば整体魔術というユニークな発想、路線変更で見つけた自分だけの色、そして単行本を重版まで持っていった読者との接点。これらは全部、次の作品に持ち越されます。ジャンプの歴史を振り返れば、三度目の連載で大ヒットを飛ばした作家は何人もいます。むしろそういう話のほうが多いくらいです。

だからこそ、いま読むことに意味があります。キナトという少年が、誰かの体を整えることでしか戦えない自分を受け入れて、それでも前に出ようとする姿。この熱さを目撃した記憶は、この先どこかで必ず効いてきます。

まとめ

長くなったので、要点を三つに絞ります。

一つ目。掲載順の推移は確かに厳しい状況を示しています。11話でワースト2に落ち、35号時点の8週平均は19.00。夏の改編で終了候補として名前が挙がり続けているのは事実です。ただし、直近では最下位を回避する週も出ており、完全な自由落下ではなく最下位圏での踏ん張りが続いています。そして終了は公式には一切発表されていません。ネット上の終了時期予想は、あくまで読者による推測です。

二つ目。評価が割れている理由は、この作品が「入口で損をして、中身で評価される」タイプだからです。1話の既視感で切った層と、4話以降の路線変更や熱い展開で評価を改めた層が同居している。画力とコマ運びのうまさは否定派すら認めており、漫画としての基礎体力は高い。届き方の問題であって、質そのものの問題ではないと見ています。

三つ目。掲載順とは裏腹に、単行本1巻は発売初日のPOSデイリーで17位を記録し、7月3日に重版出来が告知されました。そして2巻が2026年8月4日に発売され、その内容では王国評議会「12席」と魔術士失踪事件という物語の縦軸が提示されています。畳みに入る作品がしない広げ方です。生き残りの鍵は、整体魔術をバトルの答えとして完成させること、12席という大ネタを回収すること、そして単行本の数字を維持すること。この三つに集約されます。

打ち切りの噂に気づいてこの記事に辿り着いたということは、あなたはこの作品のことがそれなりに気になっている側の人間です。そういう人にお願いしたいことは、ひとつだけ。まだ読んでいない話があるなら、4話まで、できれば1巻の最後まで読んでみてください。整体しかできないと思われていた少年が、その手で誰かの魔力を整えて、戦況をひっくり返す瞬間があります。そこで一度でも胸が熱くなったなら、あなたはもうこの作品の味方です。

数字は厳しい。でも、物語はまだ終わっていません。キナトの手はまだ誰かに届く途中で、ジエンはまだ何も語っていなくて、12席の椅子はまだ全部埋まっていない。続きが読めるうちに読むというのは、連載中の漫画にしかできない贅沢です。今週のジャンプを開いて、後ろのほうのページで戦っている少年に、ちょっとだけ目を向けてみてください。整体魔術の効き目は、案外あなたの読書体験にも及ぶかもしれません。

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