漫画『桃源暗鬼』を読んでいると、「あれ、これってヒロアカに似てない？」と感じる人が少なくありません。学園（桃太郎機関）で若者たちがチームを組み、異能力（羅刹）を駆使して敵と戦う――まるで雄英高校のヒーロー科と個性バトルを思い出させる構図です。ネット上でも「桃源暗鬼 ヒロアカ パクリ」「二番煎じでつまらない」といった声が飛び交い、検索されるほど話題になっています。
では本当に『桃源暗鬼』は『ヒロアカ』のパクリなのでしょうか？表面的には似ていても、掘り下げると全く違う顔を見せるのがこの作品の面白さです。ここからは「なぜ似ていると言われるのか」、そして「どこが決定的に違うのか」を深掘りしていきます。
【桃源暗鬼】ヒロアカのパクリ？
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学園×異能力バトルという設定の重なり
『桃源暗鬼』が「ヒロアカのパクリでは？」と言われる一番大きな理由は、学園を舞台にした若者たちの成長物語という構造です。ヒロアカでは雄英高校のヒーロー科、桃源暗鬼では桃太郎機関と、いずれも組織に所属する形で仲間と切磋琢磨しながら強くなっていきます。この枠組みが重なることで、どうしても既視感が生まれるのです。
異能力＝個性と羅刹の近さ
『ヒロアカ』の「個性」と『桃源暗鬼』の「羅刹」は、どちらも戦闘を彩る特別な力です。名称は違っても、キャラごとに異なる能力を駆使して戦う構造はほぼ同じ。ネットでは「名前を変えただけでは？」と揶揄されることもあり、似すぎているがゆえに「パクリ」と言われる原因になっています。
仲間と共に任務に挑む展開
雄英高校の生徒たちが「インターン」「実習」でヒーロー活動を経験するように、桃太郎機関の若者たちも“任務”に出向きます。仲間同士の連携や友情・裏切りのドラマを絡めつつ敵と戦う展開は、どうしてもヒロアカを思い出させてしまいます。こうしたストーリーパターンの一致も、パクリ疑惑を加速させているのです。
ネットで言われる「二番煎じ感」
検索ワードに「桃源暗鬼 ヒロアカ 似てる」「パクリ」と出るのは、読者の多くが直感的に共通点を感じているからです。もちろん作品ごとのカラーはあるのですが、ヒロアカがジャンプの大看板として先に成功しているため、後から出てきた桃源暗鬼には「二番煎じ」との印象がつきまといやすい。これが「パクリ」というラベルにつながってしまう背景です。
こうして見ると、「パクリ」と言われるのは単に設定や展開が近いからであり、必ずしも内容が丸写しというわけではありません。ただその近さゆえに、どうしても比較の対象にされてしまうのです。
【桃源暗鬼】ヒロアカとの違いとは？
友情と因縁、物語の温度差
『ヒロアカ』は友情・絆を前面に押し出し、仲間と共に困難を乗り越えていく青春ストーリーの色合いが強いです。デクと爆豪の関係に象徴されるように、ライバル関係はあっても最終的には仲間として支え合う方向に進みます。
一方、『桃源暗鬼』は裏切りや血の宿命が物語の根底にあるため、人間関係の温度は重く、常に疑念や因縁がつきまといます。「信じたいけど信じられない」という緊張感が強く、ここが大きな違いです。
世界観の軸となる“敵”の正体
『ヒロアカ』における敵はヴィランという「社会に逆らう存在」であり、基本的には悪の象徴です。対照的に『桃源暗鬼』の“鬼”は、桃太郎の末裔に虐げられてきた存在でもあり、正義と悪の単純な二分では語れません。鬼側にも理屈や事情があるため、対立構造はよりダークで複雑になっています。
主人公の立ち位置の違い
デクは最初「無個性」というハンデから出発しますが、師から力を受け継ぎ「ヒーローになる」ことを一直線に目指します。その物語は王道で希望に満ちたものです。
対して『桃源暗鬼』の一ノ瀬四季は、自身が“鬼の血”を引いているという出自と向き合わされます。敵味方の境界線に立たされる主人公の葛藤は、デクとは正反対であり、物語に常に陰影を落とします。
戦いの描かれ方の違い
ヒロアカの戦いは「能力の創意工夫」や「ヒーロー活動の実践」といった、能力バトルとしての爽快感が中心です。演出も派手で、読者にカタルシスを与える方向に設計されています。
一方、桃源暗鬼は「能力を使うことの残酷さ」や「血の代償」を強調します。バトルそのものに痛みや不条理がつきまとい、読後感が必ずしもスカッとしない。これが作品の大きな個性になっています。
読後に残るテーマの違い
『ヒロアカ』が「努力と仲間で未来を切り開く」というポジティブなメッセージを軸にしているのに対し、『桃源暗鬼』は「運命や血を背負いながら、それでも生き抜く」というダークなテーマを抱えています。共に成長物語でありながら、光と影ほどの違いがあるのです。
つまり、構造が似ているからこそ比較されるけれど、その中身は全く異なる。『ヒロアカ』が“少年漫画の王道ヒーロー譚”なら、『桃源暗鬼』は“血の宿命を背負ったダーク成長譚”と位置づけられると思います。
【桃源暗鬼】ネタバレ感想
『桃源暗鬼』と『ヒロアカ』は、確かに「異能力バトル」「学園的組織」「若者の成長」といったジャンプ王道の枠組みを共有しています。この枠組みは作品オリジナルの専売特許ではなく、少年漫画の歴史の中で繰り返し使われてきた“型”です。そのため、似ている部分だけを見れば「パクリ」と感じる人がいるのも自然な反応でしょう。
しかし、実際に読み進めると『桃源暗鬼』には明確な個性があります。友情と絆を軸にする『ヒロアカ』に対して、『桃源暗鬼』は裏切りや因縁が絡むダークな人間関係を描く。社会悪と戦うヒーローではなく、血と宿命に縛られた“鬼”を巡る物語を展開する。主人公自身が敵にも味方にもなり得る立場に置かれるという構造は、デクとは全く異なるものです。
結局のところ、「似ている」という指摘は間違いではありません。けれども、その似た枠組みをどう料理するかが作品の真価であり、『桃源暗鬼』はそこでしっかりと独自の味を出しています。むしろ読者が「似てる」と思った瞬間から、その違いがより鮮明に感じられる。だからこそ「パクリではなく、比較されることで個性が際立つ作品」と言えるのです。
結論として、『桃源暗鬼』は『ヒロアカ』の模倣ではなく、同じジャンルを土台にしながら“血と裏切りのダークさ”を前面に出した別物です。似ていることを入り口にしても、読み続ければ「全然違う物語だ」と納得させられる。むしろ両作を並べて読むことで、少年漫画の懐の深さを実感できるのではないでしょうか。
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