「名探偵コナン 隻眼の残像」は、シリーズのファンにはたまらない濃密なドラマとミステリーが交錯する劇場版でしたが、その一方で、初見の観客にとってはややハードルの高い内容でもありました。
今回は、原作やアニメで積み重ねられてきたキャラクターたちの因縁や想いが交錯し、過去作とのつながりが深く描かれたことで、ファンほど楽しめる構成になっていたと感じます。
この記事では、そんな「隻眼の残像」を実際に観て感じた率直な感想を、ネタバレ込みで綴っていきます。面白かったところ、正直つまらなかった部分、そして誰におすすめできるのかまで、徹底的に語っていきますので、まだ観ていない方はご注意ください。
【名探偵コナン】隻眼の残像あらすじ
⋱ 眠れるわけがない👓 ⋰
発声可能やまびこ応援上映📡⋆͛公開から10日間で
観客動員430万人&興行収入63.4億円を突破!
メガヒット記念・感謝御礼を込めて
全国6都道府県8劇場にて
応援上映の開催が決定❄️通常の応援上映に加え
<自動制御ペンライト演出付き>の
発声可能応援上映を今年も実施🚨… pic.twitter.com/uvczZChoP8— 劇場版名探偵コナン【公式】 (@conan_movie) April 28, 2025
長野県・八ヶ岳連峰未宝岳。長野県警の大和敢助が雪山で“ある男”を追っていた時、不意に何者かの影が敢助の視界に。気をとられた瞬間、“ある男”が放ったライフル弾が敢助の左眼をかすめ、大きな地響きとともに雪崩が発生。そのまま敢助を飲み込んでしまい——
10ヶ月後。国立天文台野辺山の施設研究員が何者かに襲われたという通報を受け、雪崩から奇跡的に生還した敢助と、上原由衣が現場へ駆けつけた。事情聴取のさなか天文台の巨大パラボラアンテナが動き出すと、負傷し隻眼となった敢助の左眼がなぜか突如激しく疼きだす…
その夜、毛利探偵事務所に、小五郎の警視庁時代に仲の良い同僚だった“ワニ”と呼ばれる刑事から電話が入った。未宝岳で敢助が巻き込まれた雪崩事故を調査しており、事件ファイルに小五郎の名前があったという。後日会う約束を交わした小五郎にコナンもついて行くが、待ち合わせ場所に向かっていた途中、突然響き渡った銃声——。
果たせなかった約束と、隻眼に宿った残像。
氷雪吹き荒れる山岳で、白き闇の因縁の幕が切って落とされる——
【名探偵コナン】隻眼の残像作品情報
名探偵コナン 隻眼の残像
原作
青山剛昌
監督
重原克也
脚本
櫻井武晴
音楽
菅野祐悟
【名探偵コナン】隻眼の残像ネタバレ感想!面白かった部分!
長野県警オールスター登場
長野県警の名物キャラクターである大和敢助、上原由衣、諸伏高明が本作の中心に据えられ、劇場版とは思えないほどの丁寧な人間描写がなされた点が大きな魅力。特に敢助と由衣の関係性は、原作の風林火山事件を踏まえて観ると感慨深く、主題歌が流れた後の会話シーンはファンにとって胸が熱くなる名場面。テレビシリーズの中堅キャラにスポットを当てたことで、新鮮な視点と感動が同居した。
群像劇の完成度がシリーズ随一
本作はコナン映画でも屈指の群像劇構成が際立っており、長野県警チーム、警視庁チーム(高木・佐藤・小五郎)、少年探偵団、公安チーム(風見・安室)といった各勢力が、事件解決に向けて並行して動く。各陣営が単なる脇役で終わらず、それぞれにドラマと見せ場が用意されており、群像劇としての完成度が非常に高い。まるで群像サスペンスドラマを観ているような緊張感と構造の巧さが光る。
スピード感と緊張感が同時進行
本作は序盤から事件が発生し、そこから畳みかけるように新たな情報や展開が続く、非常にスピード感のある構成となっている。キャラクターの多さにもかかわらず、誰がどこで何をしているのかがわかりやすく整理されており、観客を置き去りにしない編集も秀逸。息もつかせぬ展開と、捜査サスペンスの重厚さが絶妙に両立している。
公安×コナンの無敵タッグ
安室透と風見裕也の公安コンビも大活躍。特にコナンが公安の内部にまで深く関わっており、風見を安室以上に使い倒している描写は、もはやツッコミどころ満載で笑ってしまうレベル。公安が完全に小学生(?)に振り回されている構図が面白く、コナン映画おなじみの“ありえない展開”もファンサービスとして魅力になっている。
ミステリー要素が超本格
今作のストーリーは、アクション要素を含みながらも、明確に“大人向けのミステリー”として作られている点が特徴。司法取引、公務員倫理、公安の裏取引など、複雑な社会的テーマが含まれており、背景知識や登場人物の過去に精通していないと理解が追いつかない部分もあるほど。だがその分、深く理解できた時の満足感は非常に高く、コナン映画の中でも異色の知的サスペンスとして記憶に残る。
高明の幻覚演出
高明が命を落としかけた際に見る“幻”として、弟・景光(スコッチ)が登場する演出は、シリーズを追ってきたファンにとって涙腺を刺激する名場面。現実ではあり得ない再会だが、それゆえに切なく、そして静かに死を受け入れる高明の心情が胸に迫る。これは過去作『ハロウィンの花嫁』にも通じる“公安の喪失”というテーマの延長線であり、映画の中でもっとも情緒的で強い印象を残すシーンの一つ。
ラストのアクション
最終盤に登場するアクションシーンでは、コナンが何に乗って滑っているのか分からないレベルの自由な物理演出が炸裂。もはやギャグの領域に片足を突っ込んでいるが、それでも画面の爽快感と迫力は健在で、シリーズの“お約束”として楽しめる。アクション映画としての快感もしっかり味わえる点は、やはりコナン映画ならではの強みと言える。
原作未視聴でも見応えは十分
たしかに予習は推奨されるが、映画としての構成や演出が巧いため、原作未読でも一定以上は楽しめる。そのうえで、風林火山事件や公安の歴史を知っているファンであれば、あらゆる台詞や演出に深い意味を見出せるという“二層構造”になっており、リピーター視聴にも向いている作り。単なるサービスでは終わらない、再鑑賞に値する丁寧な作劇が魅力だ。
【名探偵コナン】隻眼の残像ネタバレ感想!つまらなかった部分!
登場人物が多すぎて焦点がぼやける
今作は長野県警オールスターに加えて、警視庁、高木&佐藤、少年探偵団、そして公安(安室・風見)まで登場するため、キャラクターがとにかく多い。その結果、それぞれの関係性やドラマが表層的になってしまい、誰の物語だったのかが終盤でややぼやけてしまう。特に風見は何度も走らされるだけで終わり、高木や少年探偵団は物語にあまり深く関与できていない印象を受ける。
初見殺しの知識量
原作の「風林火山編」「スコッチの過去」など、過去のストーリーに精通していることを前提とした演出が多く、初見の観客やアニメのみ視聴の人にとっては、細部の感動や因縁が伝わりにくい。特に諸伏高明と弟・景光(スコッチ)の関係は、原作やTVスペシャルを見ていないと理解が難しく、クライマックスの感動が観客によって大きく差が出るという問題をはらんでいる。
コナンの存在感が薄い
今回の劇場版では群像劇にしたことで、コナン自身の動きがやや少なく感じられる場面がある。推理の中心にいることは確かだが、事件の解決は長野県警の捜査班と公安の主導で進行し、コナンは途中から彼らの後を追いかけているようにも見える。少年探偵団との連携も薄く、主人公としての主導権がやや弱まってしまったことは惜しい点の一つ。
ミステリーの魅力がやや薄い
過去の劇場版と比べると、今作はトリックや謎解き要素においてやや物足りなさを感じる構成となっている。犯人の動機や手口が最後に一気に語られるため、観客が推理する余地が少なく、ミステリーというよりは捜査サスペンスに寄っている印象。伏線回収の爽快感も控えめで、「あの手がかりが生きた!」というカタルシスが少ないのが残念な部分。
公安パートが蛇足気味
公安コンビの登場は確かにファンサービス的ではあるが、物語全体を通してみると彼らの役割がメインストーリーに完全に噛み合っているとは言い難い。風見の酷使ぶりが話題になる一方で、安室透も決定的な活躍をするわけではなく、単なる“登場して場を盛り上げる役”に終わってしまっている。公安が無理やり組み込まれた印象があり、やや蛇足に感じた観客も少なくないだろう。
アクションが地味
コナン映画といえば“もはや物理法則を無視した大爆発と飛行”が定番だが、今作のアクションは比較的控えめで、舞台が山間部や地方都市であることも相まって、スケール感がやや乏しい。もちろんリアリティは増しているが、昨年の『黒鉄の魚影』のようなスリル満点のアクションを期待すると、物足りなさを感じてしまう可能性がある。
【名探偵コナン】隻眼の残像ネタバレ感想!おすすめ読者
原作やアニメを長く追いかけているコナンファン
今作は、長野県警メンバーやスコッチ(諸伏景光)にまつわる過去の事件が関わっているため、原作やTVシリーズをしっかり観ている人ほど楽しめるつくりになっています。特に『風林火山』編や『赤と黒のクラッシュ』編、スコッチ関連のエピソードを知っている人にとっては、登場人物の言動や感情が深く刺さる場面が多く、思わず泣けるシーンもあるでしょう。過去を知るからこそ味わえる「静かな熱さ」がある作品です。
公安・長野県警など、警察キャラ推しの人
安室透(降谷零)や風見裕也、そして諸伏高明や大和敢助など、警察関係キャラクターの見せ場がとにかく多いのが今作の特徴です。特に長野県警の3人(諸伏・大和・上原)の掛け合いやチームプレイは、原作ファンにとってご褒美レベルの内容ですし、高明と景光の兄弟愛は今作の大きな感動の軸になっています。普段はあまりスポットライトの当たらないキャラたちが活躍することに価値を感じる人には特におすすめです。
アクションよりも人間ドラマや心理戦が好きな人
今作のアクションは比較的控えめで、どちらかというと謎の真相や登場人物の心の動きに重きが置かれています。警察と公安、そしてコナンがそれぞれの立場から真相に迫る“群像劇”としての面白さがあり、登場人物の葛藤や決断を丁寧に描いている点が魅力です。犯人の動機や背景も単純な悪ではなく、理解や同情の余地があるため、キャラクターの内面に興味を持てる人にこそ刺さる作品だと言えるでしょう。
大人のコナンを楽しみたい人
最近のコナン映画は徐々に大人向けの要素が強くなってきていますが、今作は特に「司法取引」や「証人保護プログラム」など法制度に関わる要素や、登場人物の過去と感情に深く踏み込む場面が多く、子どもよりもむしろ大人がじっくり観て楽しめる作品です。『黒鉄の魚影』のようなハイテンションなアクションやメカは控えめですが、その分、静かな会話や描写に深い意味が込められており、心に残る“余韻”を求める人に向いています。
逆に、爆発やカーアクションといった“エンタメ要素全開のド派手な映画”を期待している人や、コナンをあまり知らずに初見で観る人には、やや敷居が高い印象を持たれるかもしれません。
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